働き方改革 最終目標
教師の過大な超過勤務が問題になり始まった、この働き方改革。
この取り組みの間に、時代もどんどんと変化してきた。
そして、働き方改革そのものの目標も少しずつ変化してきたように感じている。
最終的にはどこに向かうのか。
もはや、業務の一部が改善され、早めに帰ることができるようになったというレベルではない。
教師の働き方改革の最終目標は、
未来に向けて教師自身も己を研ぎ澄ませること
だと設定したい。
人生100年時代を迎え、多くの人が長く働くようになる。
そして、学校を卒業した後に、一つの仕事を全うし、その後に老後を迎えるという従来のライフスタイルが大きく変化する。
加えて、わが国では少子高齢社会となり、労働環境は激変していくだろう。若年層の労働力の慢性的な不足となるだろうし、定年の延長により同じ職場での働き方も変わるだろう。
さらには、AIを含めたデジタル化により働く内容も大きく変わってくる。
そうした激変する社会の中で、自分の人生を見定めて、確実に準備を重ねステップアップしていける人が、生き残っていくような社会になっていくだろう。
再度、大学や大学院で学び直す人もいるだろう。
今では転職だけでなく、起業する人の割合も増えてきている。
自分のやりたいことや能力の発揮できる場所を自分で決め、準備をし、新しい道を進もうとする人の割合は確実に増えてきている。
やがて、そんな生き方がわが国でも普通に見えてくるようになるだろう。
教師もまた同じである。 教師という仕事は、
本来もっと生産性の高い仕事である。
そして、可能性の広がる仕事でもある。
そうさせてこなかった要因をていねいに取り除き、準備をしていけば、教師自身が大きなステップアップができる仕事なのである。
超勤に向けられていた時間とエネルギーを、自分の成長のために使い、未来に備えていくことが、これからの教師の働き方改革なのである。
今までの働き方を見直し、同じ効果を上げながら効率的に授業や事務作業を進めることができれば、教師の負担は減っていく。
負担が減ることで、今までに見えなかったものが見えてくる。
それは、子どもや保護者にとってもありがたいことなのである。
効率のいい学び方は、さらなる学びを加速していく。決して雑になるわけでも、手抜きになるわけでもない。
古い時代の学び方を卒業し、メタモルフォーゼしていくことこそ、本当の学びなのではないだろうか。
教師が、閉じ込められていた教室と職員室から、一歩抜け出し、社会を広く見ることができるようになると、その情報がむしろ子どもたちへの教育に役立つ。
自分自身が新しいことに挑戦していく姿こそが、一番の教育になる。
仮に教師が転職を目指したとしても、それは子どもたちへの裏切りにはならない。
これからの時代、自ら独立し道を切り開いていく姿こそが、子どもたちへのお手本なのである。
私はこうした新しい教師の姿を「教師4.0 起業家教師」と名付けた。
子どもに寄り添い、子どもと共に過ごしてきた教師(教師1.0)、技術を身につけプロを目指した教師(教師2.0)、そして今、ICTを駆使し新しい教育を目指そうとしている教師(教師3.0)、いずれも子どもたちにとって大切な教師のあり方である。
しかし、この激変する社会の中で、教師自身が自分の進化を見失っては、あまりにもったいない。
仕事に埋もれていく中で、自分の周りは次々と進化していくことに、後から気づいたのでは後悔するだけになる。
いつまでも古い考え方に合わせ、古い方法で授業を進め、自分の周りだけが時間が止まっていたというような生き方をしていては、あまりにもったいない。
結果的に起業しなくてもいい。起業そのものが目的なのではない。
しかし、「起業家精神 アントレプレナーシップ」を持ち、独立したスキルとメンタルとビジョンを持った生き方ができるようになれば、きっとこれから先も人生は有意義で、充実してくるだろう。
(そんな姿で超勤をするときはむしろ楽しいかもしれない。)
明日の授業の準備だけを考え、明日の授業に役立つ勉強だけで終わらず、3年後、5年後の自分と社会をイメージしながら、日々チャレンジしていく教師になること。
そうした新しい教師に進化していくために、準備ができる時間とエネルギーを確保する。
それがこれからの教師の働き方改革なのである。
そのための新しいプロジェクトを創った。