テストの平均点を90点以上を目標にする、と言ってもその結果だけを見ているだけでは何の対策にもならない。
数字から子どもたちの姿をどう読み取っていくか、こそが重要である。
一例をご紹介する。仮に学級は分かりやすく30人と設定しておく。
また、点数の配分は1問5点、国語の読解に関しては1問10点を目安に考える。
算数テストで、単位を書き忘れて間違いになった子どもが6人いたとする。
これで、学級の合計として30点の失点、つまりこれで平均点が1点下がる。
例えば、高学年の算数テストで「小数点を打ち忘れている」「分数の約分ができていない」というようなミスで、どのくらいの失点があるかをざっと計算する。
学級全体で6問ミスなら平均点1点マイナス。12問で2点マイナス。・・・
小さなミスをかき集めると学級全体では、それなりの数になるのではないだろうか。それらを合計すると、かなりのマイナスになることが分かる。
国語のテストで表の読解問題。
「書きぬきましょう」の問題をミスする。(私は句読点一つ間違えても、×にしていた。)
不正確な子どもが3人いたら、失点の合計が30点、平均点マイナス1点。
これが、1人が2問、あと1人が1問でも合計30点のマイナスである。
国語は1問10点の場合が多いので、わずかのミスでも平均点は下がる。
記号を入れる問題や、線でつなぐ問題は、1問間違えると連動して他も誤答になる。
ここで一人が間違えるとマイナス10点、3人で平均点1点マイナス。
いわゆる「うっかりミス」「ケアレスミス」と呼んで、ミスを放置していることが原因で、テストの点数をかなり落としている。
単位の書き忘れや、小さな計算ミス、書き間違いなどを指導していくだけで、学級の平均点はかなり上がる。今までミスを放置していた学級ほど爆上がりする。
上がった点数を見たら、教師の方が気づく。
いったい今まで何を指導してきたのだろうか、と。
何度も繰り返しているが、うっかりミスとはスポーツで言えばルール違反なのだ。ルールに従わなければ笛を吹かれアウトになったり、相手ボールになったり、時には失格になったりする。
スポーツでは技術を磨くことと同じくらい、ルールを守ることが大切である。
野球で特大のホームランを打ったにも関わらず、3塁に向かって走ってアウトになる選手に向かって、「あいつは実力がない。」などとは言わない。
教えればいいルールを教えていなかっただけだ。
テストは「書き言葉のコミュニケーション」である。そこには「正確に読んで、的確に答える」というルールが存在する。
教師は指導者としてルールも指導していけばいい。それだけで自信を持つ子どもたちが増えてくる。
もう少し見てみる。
あるテストで、ある子どもが60点を取ったとする。
この子どもがもし、60点が90点に上がったと仮定したら、学級の合計総点は30点上がる。つまり、これで平均点が1点上がる。
60点が5人いて、全員が90点になれば、平均点は5点上がる。
これが90点の子ども5人が、95点になっても総点は25点プラス。平均点は1点弱上がるだけである。
平均点を上げるためには、勉強が苦手な子どもの結果を上げていかなければならない。
つまり、平均点にこだわるということは、そのまま苦手な子どもの力をどう伸ばしていくことと直結している。
学級全体のミスを減らし、苦手な子どもたちの点数が5点でも10点でも上がれば、それだけで学級全体の平均点ははね上がるのだ。
これが見えてくると、テストはもうデータの取り扱いではない。
テストが終わった後の並んだ数字をぼーっと見ているだけでなく、そのテストを受け取ったときの子どもの顔が想像できる。
そして、さらにさかのぼって、授業中にどんな気持ちで参加しているのかが想像できるようになる。
教師として授業中に何に気を配り、どこに重点を置けばいいのか少しずつ分かるようになってくる。
それが、次のテストに少しずつ反映される。
小難しいことは言わないでも「指導と評価の一体」とはこんなことなのではないかと、思っている。
次に平均点95点をイメージしてみる。
学級の子どもたちの半分が100点を取り、残りの半分が90点(2問間違い)だと、平均点は95点になる。
95点なんて無理、ととてつもなく高そうに見えるが、できないことはない数値である。
ミスが減ると満点を取る子どもが増えてくる。
そうすると、教師の方は「では、満点を取れなかった子どもたちは何ができていなかったのか」と誤答に目が行くようになる。
そこからが、教師の本当の勝負かもしれない。
子どものつまずきを、テストのような数字から見抜こうとする分析的な目をもって、授業に臨むだけで、さらに点数は上がるだろう。
やがて、平均点が常時90点越え、場合によっては95点、96点、97点となってきたら、本当に「テストは単なる通過点」の意味が実感できるようになる。
子どもたちが基本的な解き方(ルール)を理解し、ていねいな文字で書くことを心がけ、ミスをしないようにていねいに解き、多くの子どもたちがごく自然に100点あるいは、それに近い点数を取っていくようになると、子どもも「たかがテスト」と思うようになる。
真剣に取り組み、それでいてそこに縛られない。
学習がもう少し高い段階でこだわるものだと思えてくる。
学級の空気も変わってくる。
さて、それでも点数が伸びない子どもがいるだろう。
配慮を要する子どもたちである。
今までミスや解き方間違いで、誤答のパターンがぐちゃぐちゃに見えていたものが、すっきりしてくると、本当に苦手な子どもたちの姿もはっきり見えてくる。
ここからが、いわゆる特別支援教育の出番である。
詳細はいずれ述べるとするが、言うまでもなくここから先は、単なる「テストの解き方」だけの問題では終わらない。
テストの指導ラインナップ
市販テストの点数を上げる
テストに対する教師のメンタルブロック
漢字のテストの目的は何だったのか
小学生のテストは教材そのものである
テストはまず問題文を読ませる
テストの解き方・最低限の知識
テスト実施方法
テスト採点方法
テスト保管方法
テストで名前と文字の指導
国語のテストの解き方1 見つける
国語のテストの解き方2 読む習慣
国語のテストの解き方3 問いに対応
国語のテストの解き方4 言語の問題
社会のテストの解き方
算数のテストの解き方1 ミスとの闘いに勝つ
算数のテストの解き方2 過程を書かせる
算数のテストの解き方3 見直しの仕方を教える
算数のテストの解き方4 裏面は授業の反映
理科のテストの解き方
テストの平均点 数字から子どもを見る方法