けのびの最も大きな課題は、スタートである。
水が苦手な子どもたちだから、顔が水に入る瞬間にあごが上がり、あごから水に入るような状態になる。
その結果、進みだしても顔が上がったままになっている。
スタート前に、耳の後ろで手を伸ばした状態を作らせる指導が多い。耳の後ろで手を伸ばしておけば、水に入ったときに顔が上がらない・・・はずなのだが、うまくいかない。
水に顔が入る瞬間に、あごを上げて水を避けているからである。
その上、この姿勢だと、真上から水に入る状態になり、前に進む推進力を得ることができない。結果として距離も伸びない。
そこで次の方法を採った。
始めは壁を背に立ち、あごの高さまで水につかる。
その状態で手を前方に伸ばし、頭のてっぺんまでもぐる。潜った状態から、足で壁を蹴り前に進む。
水の中に体を完全に入れた後、壁を蹴ることによって、課題はある程度解決した。
できるようになったら、①壁を蹴ってスタートし、止まったところで立つ。②今度は振り返って水底を蹴って、壁まで帰る、という練習を繰り返す。
ここでも時折、浮いている子どもの手を引っ張って、先に進ませてやる。水の中を進んでいく体感をさせていくのだ。このころになると、子どもたちはこの手を引いてもらうのを面白がるようになる。
手足の位置、顔を上げない、力を抜く、など初期の課題を何度も意識させながら、繰り返し練習をさせていく。
この段階になると、自分で練習していくだけでかなり上手になっていく。教師の手が少しずつ不要になってくる。
どうすれば、距離が延びるのかと考えさせながら練習させると、子どもたちの中には自分で体感することができるようになる。
ちなみに、ビート板やヘルパーなどの補助用の道具は一切不要である。
全員25m完泳を目指す水泳指導ラインナップ
水泳指導 準備シリーズ 学年全員の指導をターゲットにします
01 泳げることの向こう
02 指導は5月に始まる
03 指導の全体像
04 子どもたちのエピソード
05 指導の系統
水泳指導 浮きの指導シリーズ 苦手な子どもたちはここからていねいに指導します
06 顔を水につける
07 もぐる
08 浮く指導
09 浮く指導の小さなステップ
10 ふし浮き
11 けのび
12 けのび微細な指導
水泳指導 息つぎの指導シリーズ 25m完泳しない大半の理由はここにあります
13 息つぎ
14 ボビング
15 連続したボビング
16 浮きと呼吸の連動
17 浮きと息つぎの発展
水泳指導 ストロークとキックの指導シリーズ 協応動作という考えを水泳にも取り入れます
18 キックとストローク
19 ストロークどこを見るか
20 腕に水の抵抗を感じるか
21 キックの練習
22 キックとストロークの連動
23 ブレスをいれた泳ぎ
24 クロールのブレス
水泳指導 目標の25mへの指導シリーズ いよいよゴールへ向けて詰めの指導です
25 完泳への力を蓄える
26 目標25mへ
27 完泳までの道のり
28 酸素摂取能力
水泳指導 まとめシリーズ 学校全体で指導ができると負担軽減・効果倍増なのです
29 保護者への話
30 全校での指導
31 全校での指導系統案