潜ることができるようになると、体に浮力を感じるようになってくる。
それが「浮く」ことへの布石になる。
そのまま一気に浮くことができるようになる子どももいるが、浮けない子どもの方が多い。
子どもは両足が地面から離れるという経験がないからだ。
ジャンプのように一瞬なら経験もあるだろうが、水に浮くのは全く違う経験である。
大人でも夢の中で空中に出て、体がびくっとなって目が覚めた経験はないだろうか。地に足がつかないのは本能的な恐怖である。
これは、慣れるしかない。足が離れても怖くない、むしろ感覚が心地よいと思えるように経験を重ねるしかない。
小学校の体育は、この感覚の慣れや心地よさの実感という側面が非常に強い。別の機会に他の運動でも取り上げていく。
一番安心してもらうのは、教師が支えることである。単に手を握るだけでは安心しない。教師が水をすくうように腕を前に出す。その上に子どもが腕を乗せるようにつかませる。
この方法だと、子どもが教師をつかんでいる限りは離れることがない。教師から一方的に話される心配がなくなるのだ。
この状態で顔をつけさせ、足を浮かせる。始めはぎこちない。肩にもものすごく力が入っている。腕にしがみついている状態だ。顔もほとんど水につけていない。
それでも足はきちんと床から離れている。数秒維持できればまずは合格。
次は腕を伸ばさせ、力を抜かせる。
何度もやっているうちに少しずつ慣れてくる。未知への恐怖感が薄らいでいく。
ある程度までできるようになったら、友だちと互いに練習したり、プールサイドをつかませて練習させるなど、教師がいなくてもできるステップにする。
これら一連のステップは基本的に後戻りはしない。できたことができなくなることはないのだ。それが一つの安心材料ではある。
短い時間でいいから潜ったり浮いたりする経験を数多くこなさせる。
「今日、〇回できたら合格です。」と数を意識させると自己目標にもなる。
全員25m完泳を目指す水泳指導ラインナップ
水泳指導 準備シリーズ 学年全員の指導をターゲットにします
01 泳げることの向こう
02 指導は5月に始まる
03 指導の全体像
04 子どもたちのエピソード
05 指導の系統
水泳指導 浮きの指導シリーズ 苦手な子どもたちはここからていねいに指導します
06 顔を水につける
07 もぐる
08 浮く指導
09 浮く指導の小さなステップ
10 ふし浮き
11 けのび
12 けのび微細な指導
水泳指導 息つぎの指導シリーズ 25m完泳しない大半の理由はここにあります
13 息つぎ
14 ボビング
15 連続したボビング
16 浮きと呼吸の連動
17 浮きと息つぎの発展
水泳指導 ストロークとキックの指導シリーズ 協応動作という考えを水泳にも取り入れます
18 キックとストローク
19 ストロークどこを見るか
20 腕に水の抵抗を感じるか
21 キックの練習
22 キックとストロークの連動
23 ブレスをいれた泳ぎ
24 クロールのブレス
水泳指導 目標の25mへの指導シリーズ いよいよゴールへ向けて詰めの指導です
25 完泳への力を蓄える
26 目標25mへ
27 完泳までの道のり
28 酸素摂取能力
水泳指導 まとめシリーズ 学校全体で指導ができると負担軽減・効果倍増なのです
29 保護者への話
30 全校での指導
31 全校での指導系統案