理科シリーズ 集中する実験観察
6年生理科、「水溶液の性質」。
「塩酸にアルミニウムを入れるとどうなりますか。」というような問題がある。
これは学習問題がつまらなさすぎる。
わざわざ取り上げるくらいだから「何もない」わけがないことは、6年生ならすぐに分かるはずだ。
だとすれば「溶ける」あるいは「爆発する」程度の予想しか出ないだろう。
塾や通信教育で学んだ子どもたちは、もう答えが分かっている。
だから、わざわざ実験して溶ける様子を見せても、ノートに「溶けた」しか書けなくなるのである。
一工夫して、こんな話をする。
「どうなりますか、って言われてもねえ。
実は金属のアルミニウムは溶けてしまうのです。知っている人もいるかもしれませんね。
問題は溶け方です。
すぐにじゅわっと溶けると思いますか。ゆっくり溶けると思いますか。
(挙手で予想させながら、以下テンポよく聞いていく。)
ゆっくりという人に聞きます。具体的にどのくらいの時間ですか。
溶けるときに泡は出ると思いますか。出ないと思いますか。
音はすると思いますか。しないと思いますか。
匂いはすると思いますか。しないと思いますか。
熱くなると思いますか。逆に冷たくなると思いますか。
色は変わると思いますか。変わるとしたら何色になると思いますか。」など。
そして
「そうした様子を全部、書けるだけ記録しておいてください。」
と伝える。においの嗅ぎ方は必ず指導する。それ以外の安全指導も当然行う。
溶けた後でノートに記録させるが、記録の量は格段に増える。
これは実験を1回しかしないときに起きる弊害をカバーする方法である。
仮に2回以上同じことをするのであれば、1回目は「どうなりますか。」と問うてもいい。
1回しか実験しないのに「どうなりますか」と問えば、子どものインプットは「溶けた」にしかならないのだ。あとの情報は全て捨てられる。
結論は分かったが過程が不明という場合は、そこに視点を当てさせると見え方が変わる。
余談だが、修学旅行に行く前に、見学地の写真を事前に見せるかどうかという話と同じである。
私は、完全に「事前に見せる派」である。
子どもたちが何度も旅先に出向くことができるなら、1回目は軽く見せるだけでもいいだろう。
一度しか行かない、それもタイトなスケジュールで、油断すると見逃してしまうようなこともあるかもしれない。
だから、行ったらこんなものを見るよ、これはこんな意味があるよ、と下情報を入れておく。
その上で、本物を見る。
すると、見え方が変わってくる。
先の実験では、子どもたちがみな驚きの声を上げつつ、ものすごい速さでノートに記録をしたり、協力して時間を計ったりしていたことを、おまけとして付け加えておく。