読解力の話になると「本を読んでいる」「読んでいない」が取り上げられることがある。
特に最近は文部科学省の学力調査が実施されているため、あの文章を読むためには日ごろから本が読めていないといけない、みたいな話になっている(ところがある)。
個人的な結論から言えば、文科省の学力調査の高得点と、日ごろの読書量に因果関係があるのかどうかはよく分からない。本を読まないよりは、読んでいる方がいくらかでも有利な気もするが、明確な因果関係は見いだせない。
相関関係はあるかもしれないが、どちらが先かは分からない。あるいは、全く別の要因があって、それが学調にも読書にも影響を与えているのかもしれない。
いずれにしても、読解力の結果が悪いことを読書ができていないせいにするのには指導者としては無理がある。
そもそも教師が読書の指導をしていないのにも関わらず、それができていないから点数が上がらないのというのは、責任転嫁である。
読書量が直結するというのであれば、学校を上げて読書量の増加に努めればいい。しかし、そういう動きにならないところを見ると、言っている教師の方も確たる自信があって、読書量との因果関係を主張しているわけではないのだろう。
もっともかなり以前から、国語が得意になるためには本を読めばいいというような話はよくなされていた。これも同じであるが本を読めば必ず国語が得意になるというわけではない。
学力調査は、文章を読んだ上に、問いが発せられる。子どもにしてみれば、読んだ上に問いに正対して答えを導くという二段階になっている。子どもたちの中には、この「問いに正対する」という作業や思考が苦手なという場合もある。
読むことでインプットした情報を、どのようにアウトプットするかは話は別なのである。
つまり、ここでもやはり指導が必要となる。子どもの今持っている力だけに依存するのではなく、インプットとアウトプットの関連についてはていねいな指導が必要なのである。
安易に迷信にすがって指導を放棄してはいけない。あろうことか読解力が伸びないことを「本を読ませない家庭が悪い」と言い切る教師がいる。非常に残念なことである。
読書指導ラインナップ
本好きにするための指導群
01 図書館は宝の山
02 偶然の出会いを待つために
03 初日の指導は図書館探検
04 図書館利用マナーを教える
05 高学年でも貸し出しは増える
06 読書感想文は書かせない
07 読書量の目安はどのくらい?
08 学級文庫は必要か?
09 読解力と読書は直近では無関係
10 国語教育と読書は別物として考える
11 子どもの目の動きを読む
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