授業における挙手の活用例

教育技術シリーズ

挙手によらない授業をつくる その3

 前に、挙手に依存しない授業づくりについて述べた。

 挙手に依存しない授業づくり1列指名
 挙手に依存しない授業づくり2ランダム指名

 その後の授業の進化について述べる。

 授業が挙手に依存しなくなってきたら、挙手の使い方はさまざまに出てくる。

<挙手の使い方1>意思表示

 子どもたちに意思表示させるときに、挙手を使う。
 例えば、討論のような意見が分かれるときに、現段階でどちらの意見なのかを尋ねるときには挙手によって確認する。

 しかし、こんな時ですら手を挙げない子どもが一定数いるものである。
 「今の段階で」「あえてどちらかと言えば」という条件の中で選択をさせるのだから、二択ならば必ずいずれかに意思決定をさせる。
 それを挙手によって確かめるのである。

 ここで高学年でも手の挙げ方を指導する。子どもたちは意見に自信がないと、手もきちんと挙がらない。教師は繰り返し伝え、今後意見が変わってもいいのだからと繰り返し確認をして、まっすぐ挙げさせる。
 細かいようだが、多くの教室でこうした小さな選択の場でも子どもたちの「逃がし」てしまっている。子どもたちは選択を決定する習慣が身に付かない。
 この程度の意思表示ができないで、討論会などで意見が言えるようになるわけがない。

 子どもたちが、将来に渡って自分の考えを表示できるようなトレーニングはあらゆる場所で行っていく必要がある。

教師「今の段階で、どちらの意見ですか。」
教師「A」 子ども挙手
教師「B」 子ども挙手
教師「どちらにも挙げていない人がいますね。もう一度聞きます。」
 というように詰める。二回目でも手を挙げない子どもがいたら、直接指名して
教師「〇〇君、君はどちらの意見ですか。」
と詰めることもできる

この時に手の挙げ方をうやむやにしている子どもが多いようならば、一度は手の挙げ方の指導をすればいい。
 このほかに意思表示であれば、短い時間の作業(短文の視写など)が終わったときに「終わりました。」と挙手しながら教師に伝える場を設定することもある。

<挙手の使い方2>チャレンジャー

 例えば音読の指導を創造してほしい。
 ずっと一斉に読んだり、列指名で読ませたりしているときに、突然
「独りで読んでみたい人?」
 と聞く。

 多くの子どもが予想していなくて、戸惑っている時に、すっと手を挙げる子どもが数名いる。そして、その子らの一人に指名をして音読してもらう。
 読み終わったら、(たとえどれだけ拙くても)大いにほめる。

「先生が突然呼びかけて、ほとんどの人がびっくりしているときに、迷わずしっかりと手を挙げていた〇〇君は、さすがだと思いました。
 何よりもこうして一番に挑戦することは、どんな時でもすばらしいことなのです。」
 と戸惑うことなく手を挙げたことを大いにほめる。

 そして、
「ほかに?」
 と次を促すと、先ほどよりも挙手の人数が増える。
 この後の授業の展開は、その時の時間配分などにもよるだろう。

 このチャレンジャーのシステムはあらゆるところで使える。
 外国語のスピーチ、指名なし発表(討論)の一番手、歌のコンテスト、さらには教師のお手伝いとしての仕事の依頼など。

<挙手の使い方3>やらないという選択肢をつぶす

 資料を見てノートに「分かったこと、気が付いたこと、思ったこと」を書かせて、数を確認する。全員が数個は書いていると把握できたところで
「発表できる人?」
と聞く。
 「発表したい人」ではない。全員が複数個書いているのだから、特別な事情がない限り、発表は「できる」のである。
 「したい人?」という聞き方をしてはいけない。ましてや「発表してくれる人」のような取り方によっては子どもに媚びているかのように聞こえてしまう言い方はやめなければならない。
 教師の意図はともかく、こうした言葉には「発言は君たちに選択肢があるんだよ」と言外に伝えていることになる。

 だから、教師はその主旨を説明し、ここは本来全員が手を挙げているべきことをつたえなければならない。
「全員が何かの意見を書いているのですから、発表はできるはずです。したいか、したくないかを聞いたのではありません。できるか、できないかを聞いたのです。もう一度聞きますよ。」
 と詰めていく。

 このような趣旨も話す。
「みんなで意見を共有しようという時に、自分は友だちの意見を聞くけど、自分からは情報は与えないというのはおかしいことです。恥ずかしいからという理由であっても、自分だけが聞くだけというような方法を採ってはいけないのです。」

 そして、最後に
「では、手を挙げていない人を指します。(笑)」
 と冗談めかして言うと、手を挙げる。さらに
「いや、どうせ先生が手を挙げる、挙げないに関係なく当てる(指名する)ことは、みんなも知っているでしょうけどね。」
 と付け加えると、子どもも「確かにその通りだった。」という顔になる。

「先生は今、手を挙げてもらうことで、君たちの授業への態度を確認しただけです。」
と詰めておく。

 日頃から、
「そうした一瞬の何気ない行動に、自分の気持ちが出てしまうのです。」
と伝えていた。発する言葉、何気ない所作、表情、そして挙手などに自分がいつも何を考えているかが出てしまう。
 授業に対する構えが、その一瞬の挙手に出ているということを、子どもに自覚させる。
 そして、似たような確認の行動を授業の中に織り込んでいく。
 子どもたちは、教師の目をごまかせないことを理解していく。

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