原初的おもしろさ その4
原初的なおもしろさについて、走り高跳びでも考えていく。
初めて走高跳びに出会った子どもたちは「怖い」と思っている。当たり前である。バーを跳び越えるときに失敗したら痛いだろうという予測はだれにでもできる。
失敗したらバーは簡単に落ちるので実際は痛くないし、心配もないと教えられても本当が恐怖を感じるのは当然のことである。
それが分かる教師は、ゴムを跳ぶという活動を入れる。竹のバーよりは痛くなさそうだ。子どもたちの抵抗感も少しは減るだろう。
しかし恐怖感は減少しても高く跳ぶことのおもしろさは実感しにくい。
私は、高学年でもバーの高さを50cmから始める。子どもたちのひざ下くらいの高さである。またぎこせる高さである。これを「跳ぶ」練習から始める。
そのときに「はさみ跳び」を教える。全員にこれが正しい跳び方であると教える。そして、右側からも左側からも助走する経験もさせる。
スタンドは4台から6台準備させておくので、待ち時間もほとんどない。
これで何度も何度も跳ばせる。子どもたちは20回、30回と跳ぶだろう。跳ばなくてもまたぎこせる高さを、跳んでいくのだから怖くはない。繰り返すうちにはさみ跳びの跳び方でもテンポよく跳べるようになる。
ここまでが原初的な跳び方の土台の土台である。
中にはこれでも助走のタイミングが合わない子どもや、踏み切り足が反対になる子ども、そしてバーへの進入角度が、ほぼ垂直になり真正面から跳ぶ子どもが出てくるくらいだ。
頃合いを見計らったところで、55cmにあげる。苦手だと思う子どもたちの心の中は少し不安になるだろうが、見た目は全くさっきと変わらない。まだまたぎこせる高さだ。
同じく左右から何度も跳ばせる。
そして、60cmへ。
また少し緊張感が走るが、それでも行ける。引っかかる子どもが少しは出てくるが、構わずにどんどん跳ばせる。
障害物を高く跳びこすという日常ではない感覚を十分に味わってもらうために、ずっと跳ばせる。
まさに飽きるまで跳ばせるのだ。この後は別途続きを述べる。
体育指導 楽しい授業づくりの超基本シリーズ
14 成功する授業の視点「高田四原則」
15 授業の基盤「原初的なおもしろさ」
16 十分な感覚の体感と技の向上
17 感覚の進化で授業を組み立てる
18 勇気も根性も不要
19 「体育が苦手」はどこから来るか
体育指導 研究と実践シリーズ
20 研究「ICT教育」
21 研究「主体的・対話的で深い学び」
22 教えることをためらわない