評価基準を決める
これをできるのは、学年主任の中で、相当に力のある方かもしれない。
それは、四月の段階で「評価基準」を決めておく、ということである。
これは、結局のところ年度末に当該の学年で、どれほどの学力向上を目指すのかという目標があるということである。
教師でない人が聞いたら「そんなのは当たり前ではないかと」と思うかもしれないが、実際の現場では、全く話が違う。
子どもたちの実態が毎年違うから、四月のアプローチが異なる。途中のステップも違う。
それを理解したうえで、学期ごとの評価基準を決めていかなければならない。
この評価基準を決めるときに、通信表を出す間際になって、子どもたちの実態から基準を動かす場合がある。テストの結果などが思わしくなければ、高い基準のままに評定するとCランクが続出ということになる。
学級間の差も考慮しなければならない。
そうした修正があるとしても(これはないのが本筋であるが)、予めこのくらいの力は子どもたちに身につけさせていこうと、学年チームと共通理解していく必要はある。
しかも四月の段階で、である。
同じように、体育、音楽、家庭、というような実技が中心となる教科では、どのような方法で評価を行い、どのような基準にするかも決めておかなければならない。
これを4月の段階で決めておくと、年間を通して安定した評価が可能になる。同学年も、独りで悩まなくて済むので、若手でも評価は安定してつけられる。(ただし、ベテランと同じように伸ばせるかどうかは別問題だが。)
市販テストの採点基準も、決めておく。
テストのたびに、ここはどうつけますか、と相談しなくていいようにするためだ。
例えば、国語の場合「書きぬきましょう」という問いならば、一字一句間違えても、×にすると決めておく。部分点を付けるというような方法は採らないとしておく。
こう決めておいた上で、日ごろからていねいに指導をしていくのである。
すると、子どもたちもテストでもていねいに解こうとするし、学年全体の平均点も上がっていくのである。
総合や学校行事のように学年全体で行うものも、(最終的には学年で合意の上で具体化するのだが)主任の頭の中には青写真があった方がいい。
このような評価基準が決まれば、四月の第一単元から指導に反映することができる。
学年というチームは、その大半をばらばらで過ごしている。一度、学級に入れば放課後まで顔を合わせないことだってある。だから、早めに相談をして合意形成をしておく方が、特に後輩の皆さんにはありがたいのである。
これを七月になってから、「そろそろ通信表だけど、どうやって成績つけようか?」などと相談をしている姿を見かけることがあった。
この段階で、何をもって評価するのか、などと言われてももはや遅いだろう。
かくして、学年主任の思うような評価基準となり、(それがどういう意味や価値があるのかも分からないまま)同学年は、評価をやり直したり、場合によっては適当につけざるを得なくなったりする。
自分が教務主任をしていた時には、この学年の評価基準は5月末には全学年提出してもらっていた。
その縛りが、7月になって役に立つのである。
学年主任シリーズ 意外に語られてこなかったことに独断と偏見で切り込みます
01 先の見通しが第一の仕事
02 勤務時間は厳守!
03 やってはいけない打ち合わせ
04 チームでの合意形成の方法
05 初任者の教室を1000回見た
06 高段の芸「評価基準」
07 新しいことに挑戦しよう
08 時数計算は決して粗末にしない
09 そろえることより説明責任
10 仕事の任せ方