「日常」のクオリティを上げていく
子どもたちに、よくかけていた言葉である。
「昨日より速く、昨日よりていねいに、昨日より正確に。」
例えば、割り算の筆算を学習することをイメージする。
単元の時数は、10時間を超える。毎時間、少しずつ難しい内容になっているとはいえ、基本的には筆算を解いていくこの繰り返しである。
子どもたちが解き始めたら、先の言葉を言う。
一つ一つの数字、定規を使って引く線、補助計算、その小さな一つ一つを昨日よりもほんの少し速くできるようにする。
速くしながら、同時にていねいさを維持する。いやむしろさらにていねいにするつもりで書く。
そして、結果的に昨日よりもミスを減らしていく。
子どもたちは、速いことと、ていねいであることは相反すると思っている。
しかし、両者は同時に成立する。そのようにコツコツやっていけば、子どもたちは速くかつ、ていねいに物事を処理できるようになる。
こういう長い時間をかけた単元の時には、特に指導が有効である。
漢字練習でも同じである。
スキルの中に書き込みをするときに、同じ言葉をかけていく。
ていねいさにこだわるあまりに、ゆっくりになってしまう子どもたちが一定数いるが、こうして言葉をかけていくと、次第に速く書けるようになっていく。
日記、作文、学習新聞、などなど使えるところはいくらでもある。
実際に時間を計る必要はない。その心がまえが大切なのである。
この考え方は、例えば教科書や筆記用具を出すとき、帰りの用意をするときなどにも広げることができる。
子どもたちは、テンポよく動くことが好きである。心地よい速さの中で、無理なく動けることが快の感情になる。その感覚を教室の中でもノーマルにできると、動きは素早いのに、せかされていない心地よさが生まれる。