中位群を引き上げる
学級あるいは学校全体でも、子どもたちの学力を上げようと考えるならば、まずは中群を引き上げることから考えることを提案したい。
市販テストで言えば、60点から80点を取るような子どもたちとイメージするといい。
学力の向上を考える場合、最も厳しい状況に置かれている子どもたちに対処しようとするのがおおいのではないだろうか。
多くの教師は、まず真っ先にそれを考えるだろう。良心ある教師ならば、そう考えるがごく自然であることも理解している。
それでもまず中位群の引き上げを優先した方がいいと主張する。
中位群の子どもたちは、比較的簡単な方法で学力を引き上げることが可能である。
伸びきっていない原因とその対応は後に詳述するが、教師の取り組み次第で結果がはっきりと出てくる。
中位群が伸びてくると、学級全体の学習に対する意識が変わってくる。
子どもたちなりに何となく考えていた「序列」のようなものがなくなり、多くの子どもたちが自分の力を発揮しようという空気が生まれる。
それが学習に対するいい緊張感を生む。
テストで言えば、今まで学級の平均点が80点だったのが、90点や95点になっていくようなイメージである。
ノートまとめや学級新聞、あるいは討論の授業などさまざまな学習において、活躍しようとする子どもが自然と増えてくる。
中位群が伸びてくると、下位群の子どもたちの状況がはっきりと見えてくる。
この子どもたちの多くは特別支援的な配慮を要する場合が多い。
学級全体が伸びてくると、教師の意識もこの子どもたちに向けやすくなる。より個別の対応がしやすくもなる。
一見、差がはっきりしたせいで、問題が生じるかのように思えるが、子どもたちは自分が満足のいく学習ができていれば、違いを理由にした差別的な行動には出ようとはしなくなる。むしろ、それぞれがみんながんばればいいという空気が生まれる。
この中位群にいる子どもたちが伸び悩んでいる理由はさまざまにある。
しかし、いずれにしても比較的簡単な方法で引き上げることができる場合が多い。
ていねいさ
ノートにしろ、テストにしろ、雑に書いている場合が多い。雑に書いているせいで、自分自身も読み間違えていることもある。
文字が雑だというだけでなく、ノートの行に収まらない、文章の主述があっていないなど、さまざまな要因があるが、どれも共通して言えるのは、教師の指導が入っていないことが原因である。
ていねいさを身につけさせるには、さまざまな方法を長期にわたって実施しなければならない。のちに詳しく述べる。
速さ
ゆっくり取り組むことで、結果的に間に合わすに成果を出せない子どももいる。
大きく分けて二つの場面が見て取れる。
一つが取りかかりが遅いことである。
もう一つが、作業に時間がかかることである。この作業に時間がかかるのも、さらに分けると、途中で休み休み取り組んでいる場合と、間断なく取り組んでいるが、処理に時間がかかる場合がある。