走り高跳び3
50cmの高さから始めたのは理由がある。子どもたちにフォームを教えることが中心の時に、高さも意識させ、しかも跳び越えるようにというのは、条件が多すぎる。
またいでも通過できるほどの高さなら、安心できる。安心して、フォームに意識を集中させることができる。
こうして一つの技術を身につけさせる時は他の条件をなるべく排除してやると効果が上がる。
何度も跳ばせる。左右のどちらも何度も跳ばせる。
跳ばせながら、個別に声もかけていく。
慣れてきたと判断したら、一斉に5cm高くする。見た目はほとんど変わらない。まだまたぎこせる高さでもある。
この高さで何度も跳ばせる。教師はフォームについて声をかけていけばいい。
もうこのくらいになると子どもたちは10回、20回と跳んでいる状態になる。
体育の授業で大切な原則がある。
運動の初期段階では、単純に回数を重ねるだけで一定水準までは上達する。
経験が蓄積され、動きがスムーズになる。それだけで記録が伸びたり、無理なく動かせるようになったりする。それまでは何度も何度も経験させる。そのためにも全く怖くない条件をあえて作り、そこでフォームにだけ意識を向けるようにしている。
やがて60cmにあげる。全員が跳べそうであれば、全てのスタンドの高さを一斉に上げる。もしも苦手そうな子どもがいたら、1台ないし2台は、55cmのままにして置き、どちらがいいかを子どもたちに選択させる。
高さが変わってもすることは同じである。55cmを跳んでいた子どもたちも十分な高さが出ていると教師が判断したら、60cmにあげていい。
しばらくしたら次に60cmにあげる。一部は55cmのままでいいのは先ほどと同じである。子どもたちに緊張が走るが、まだまたぎこせる高さである。
繰り返し跳ぶように指示する。
そろそろ踏切の方向を確定させてもいい。跳びやすい方を選ばせる。
コツを追加する。膝を自分の体に引き付け、高さを生み出すのである。