原初的おもしろさ
運動にはそれぞれに固有のおもしろさがある。
その運動をやりたくなる心地よさのようなおもしろさである。それを私は「原初的おもしろさ」と名付けている。
バスケットボールの原初的なおもしろさとは、シュートを成功させることだろう。ボール運動の場合は得点をいれることが原初的なおもしろさとなる。
器械運動であれば、運動によって得られる感覚が面白さとなる。例えば、跳び箱運動であればふわっと浮く感覚、マット運動では回転の感覚などがそれにあたる。
陸上運動でも感覚のおもしろさはある。高跳びや幅跳びもそうである。走るときのスピード感や走り続けるときの高揚感のようなものも同じである。同時に自分が限界に挑戦する感覚、つまりそれが記録になるのだが、それも面白さになる。
表現運動にも水泳にもある。
この原初的な感覚を体感させることが、小学校の体育の基礎中の基礎だと考えている。この感覚の体感が「もっとやりたい」という行動へと移らせる強烈な動機となる。
跳び箱運動で開脚跳びができない原因を考える。
ジャンプ力や筋力が足りないから跳べないわけではない。もちろん勇気など論外である。
跳び箱運動のおもしろさとは、一見跳べそうもない障害物(跳び箱)を足の跳躍力だけでない。
腕を支点とした体重移動によって、大きな跳躍を生み出し跳び越えるというおもしろさである。その時の「ふわっと」体が浮く感覚をおもしろい、心地よいと感じることが原初的なおもしろさである。
繰り返すが、筋力や勇気、根性などの問題ではない。
跳び箱運動に必要以上の筋力が求められるのは、かなり難度が上がってからである。高校体育やオリンピックなどのレベルになると筋力が必要となる。
さて、子どもたちがこの跳び箱の原初的なおもしろさを感じるようになるまでに、それ以前の運動要素が必要になる。この、ある運動ができるために系統的に布石として存在する運動のことを「アナロゴン」と呼ぶ。
跳び箱運動の場合は、まず高いところにのぼりジャンプしておりるという高さのある跳躍があるだろう。この時に高いところからのふわっとした感覚や安全に着地する安定感のような感覚も必要である。いろいろなジャンプの形でも安定してくると一層おもしろくなる。そして、腕支持による動きもある。跳び箱にまたがり、腕で動いていくような感覚のおもしろさも体感しておきたい。
運動における系統は、特に初等教育の場合は「原初的おもしろさ」を軸において設定していくと、見えてくる。
体育指導 楽しい授業づくりの超基本シリーズ
14 成功する授業の視点「高田四原則」
15 授業の基盤「原初的なおもしろさ」
16 十分な感覚の体感と技の向上
17 感覚の進化で授業を組み立てる
18 勇気も根性も不要)
19 「体育が苦手」はどこから来るか
体育指導 研究と実践シリーズ
20 研究「ICT教育」
21 研究「主体的・対話的で深い学び」
22 教えることをためらわない