水泳指導29 保護者への話

体育授業のコツ

 泳げるようになった子どもたちが、家に帰ってからその喜びを伝えるときに、本当は保護者にも一緒に喜んでほしい。
 泳力が高まったことが大切なのではなく、今まで泳げないでいた自分の悔しさやみじめさから解放され自信がついたことが大切なのだ。

 一番身近な人が、その喜びを共有してくれることは子どもにとっても大きな財産になる。

 ところが、保護者の中にはそれがピンとこない方もいる。
 大人になって25mを泳げなくても、何も困ることがないせいか、子どもの時の感覚を忘れてしまっている場合がある。

 学級通信で大々的に宣伝する方法もあるだろうが、一度に全員が達成するわけでもないので、大げさには書けない。(万が一泳げなかった子どもが出ることを想定するだろうし、そもそも病気などが理由で見学の子どもたちもいる。)

 ベターな方法は、電話で連絡をすることだろう。教師が喜んでいることを、保護者に伝えるという方法である。

 ただ、私は書いておきながら申し訳ないが、あまり電話をしたことがない。
 感動を強要することはたとえ親といえども難しいからだ。
 電話をしても喜んでくれるとは限らない。子どもも、親に伝えるほどのことはないと思っているかもしれない。

 結果として、子どもがその喜びを将来忘れることになったとしても、それはそれで全力を尽くし続けるのが、我々の仕事である。

 懇談会でこんな話をしたことがある。

「水泳の学習で、25mに挑戦しているときに私も子どものそばで声をかけるんですよ。
 初めて泳げた子どもたちってどんな顔をしているか、知ってますか。 
 ゴールに手がタッチして、子どもががばっと水から顔を出したときに、疲れたような、うれしいよう  な、それでいて信じられないような顔をしているんです。
 その顔を見ながら、おめでとうって声をかけるんですよ。
 その一瞬を見ることができるのは、教師の特権なんです。」

 嫌味を言っているわけではない。親の気づかないたくさんのドラマが子どもたちにもあっていることに気づいてもらいのである。

 それにしても本当にあの表情を見ることができるのは特権だと思う。

全員25m完泳を目指す水泳指導ラインナップ

水泳指導 準備シリーズ 学年全員の指導をターゲットにします
 01 泳げることの向こう
 02 指導は5月に始まる
 03 指導の全体像
 04 子どもたちのエピソード
 05 指導の系統

水泳指導 浮きの指導シリーズ 苦手な子どもたちはここからていねいに指導します
 06 顔を水につける
 07 もぐる
 08 浮く指導
 09 浮く指導の小さなステップ
 10 ふし浮き
 11 けのび
 12 けのび微細な指導

水泳指導 息つぎの指導シリーズ 25m完泳しない大半の理由はここにあります
 13 息つぎ
 14 ボビング
 15 連続したボビング
 16 浮きと呼吸の連動
 17 浮きと息つぎの発展

水泳指導 ストロークとキックの指導シリーズ 協応動作という考えを水泳にも取り入れます
 18 キックとストローク
 19 ストロークどこを見るか
 20 腕に水の抵抗を感じるか
 21 キックの練習
 22 キックとストロークの連動
 23 ブレスをいれた泳ぎ 
 24 クロールのブレス

水泳指導 目標の25mへの指導シリーズ いよいよゴールへ向けて詰めの指導です
 25 完泳への力を蓄える
 26 目標25mへ
 27 完泳までの道のり
 28 酸素摂取能力

水泳指導 まとめシリーズ 学校全体で指導ができると負担軽減・効果倍増なのです
 29 保護者への話
 30 全校での指導
 31 全校での指導系統案

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