理科2 イラストは2次元から始める

教育技術シリーズ

イラストは二次元から始める

 どの学年でも、1学期は植物を扱う単元が多くなる。
 そして、その成長を記録用紙に書き留めておく活動が出てくる。

 この、植物の様子をノートや記録用紙に書くときに、いきなり外に出かけて、生えている植物を写して描くのは難しい。
 立体だからである。

 子どもたちに植物の絵を描かせるときには、教科書の写真の模写から入るといい。

 平面のものを、平面の紙に写していく方が、技術的にははるかに簡単である。葉の重なり方など、立体特有の構造も平面的に理解できる。
 教科書の写真であれば、どの子どもも同じものを写すので、完成したものを比較することもできる。

 また、教科書の写真そのものが、その特徴が分かりやすい大きさや向きで撮影してある。
 たかが1枚に思える写真だが、教材としての有用性はかなり高い。

 今であれば子どもたちもデジタル端末を持っているだろうから、写真を撮ってくればすむ活動である。イラストを描く必要はないと思うかもしれない。
 しかし、一度自分の目で見て「イラストを描く」というアウトプットを通すだけで、子どもたちの認識は大きく変わる。描くことで気づくこともたくさんある。

 ならば、子どもが写真に撮ったものをそれぞれがイラストにすればいいとも言えるだろう。これも、先に述べたように一度は教科書のように同じものを描いてみる方がいい。

 子ども同士も描き方の違いを比べることができるし、教師も描いたイラストを見て、子どもたちの能力を推し量りやすい。

 これは、昆虫やメダカなどの動物の観察にも言える。
 特に動物は動くので、観察が難しい。また、子どもたちはなじみのあるものほど、詳細を観察せずに思い込みでイラストにしようとする。

 だから実物を見せる前に、一度写真を見せておいた方がいい。
 教科書の同じイラストを見ながら、気づいたことを発表させると、互いの意見が新しい視点の発見になることもある。

 また描かせるときには「まるでコピーかと思った、といわれるくらいにそっくりに描きましょう。」と促すことで、ていねいに正確な模写を心がけようとする。

 イラストを描かせると、えらく時間がかかる子どもも出てくる。

 どこからどう描いたらいいのか分からない場合は、例えば図工で人物を描くときに「鼻から描きましょう。」と指示するように、部分を指定してそこから描き始めるような指示をだしていくといい。

 理想を言うならば、模写の初期段階は写真やカラーのイラストよりも、線描画がいい。
 子どもも線を写せばいいので、描きやすい。
 もっと言えば、トレーシングペーパーのようなものに、写し描きをするのがいい。
 しかし、実際には手に入りにくいので、できるところで対応していく。

 鉛筆の動きがともかくゆっくりだったり、描いては消すを繰り返す子どもたちの場合は、時間を区切ってできたところまででいい。

 図工のように作品を完成することが目的ではない。描写を通して、対象物への認識を深めることが目的である。
 イラストが完成していなくても、物の見る目は育っていると考えていい。

 また、残りは家庭学習で完成させてもいいことを告げておけばいい。教師も完成することだけを評価の対象にすると、速さだけが基準となるので注意をするといい。
 年間を通して何度も活動していくと、子どもたちも自然と要領をつかんでくる。4月の1回目から、高い完成度を要求しなくても大丈夫である。

 繰り返しになるが、イラストを描かせるのは、対象物への観察力を養うことが目的である。
 この活動は多くの子どもたちには、人気であり(もちろん嫌いな子どももいるので注意。)集中して取り組む活動でもある。

 1年間かけて描く力が育てばいいというつもりで、気長に取り組んでいくことをお勧めする。

タイトルとURLをコピーしました