ノートの書き方を指導するのは手間も時間もかかる。
多くの教師がノートを回収して、放課後にチェックし赤ペンを入れたりしていることだろう。
短時間で、効果のあるノート指導を紹介する。
大原則 授業中に指導して、その場で修正させる。
補足 短時間で集中するために、教師は見るべきことを一か所に集中する。
新年度始まったばかり頃、ノートに日付を書かせる指導を例に挙げる。
ある程度、書いたところで「先生に持ってらっしゃい」と指示する。
教師は前に立ち、両サイドから持ってくるように促す。
片方のノートを見ながら、もう片方を受け取り、交互に見る。
その場で「合格」「不合格」を一瞬で判断する。〇をつけたりもしない。
不合格の子どもは合格するまで何度もやり直して持ってくる。
この指導だと、子どもたちが慣れてくると1分かからずチェックが終わる。
待っている子どもたちも退屈しない。
こうしたチェックを、年度初めは毎日行うといい。
代わりに、評価基準は明確に、そして1つでいい。
ノートの日付も、初めのうちは書いているかどうかを見ているが、やがて
「数字がていねいに書けているかどうかを見ます。持っていらっしゃい。」
と基準を伝えるようにする。
学習の中でチェックをすることを繰り返せば、子どもたちも緊張感をもって授業に臨むようになる。
しかも、その場で修正させれば、結果的に全員が合格で終わる。
これを、一度に何個も指導しようとすると、見る観点が増え複雑になり、時間もかかる。
教師の見る時間も増え、場合によってはその場で個別指導など始めると、長い列ができてしまう。
ノートの指導は、学習内容を理解させるための手段に過ぎない。
ていねいに書かせるのは、ミスを防いだり、理解を確実なものにするためである。
必要な指導だが、ここに時間を使っては本末転倒である。
その場の評価は、子どもにとって最も効果的である。子どもの時間の流れは大人の数倍と考えていい。一晩経てば何のことだか覚えていない子どももほとんどである。
後から叱られてやる気も起こらない。その場で不合格でも、すぐに修正すれば時間内に合格することができる。結果的に授業で達成感を感じることができる。
教師の方も、次第に慣れてくる。ノートを受け取った瞬間に合否の判断ができるようになる。
そして、出していない子どもが誰なのかもチェックしなくても分かるようになる。
こっそり出さないで済ませる子どもが出たりするが、「〇〇君、もってらっしゃい。」と声をかければ、子どももあきらめる。(笑)
複数をチェックする場合もある。
例えば、漢字のチェックは練習問題10問全部をチェックするから大変になる。
「今から○番の○という漢字のはねと、○番の○という漢字のはらいだけ見ます」と宣言する。子どもも何を気をつければいいのかよく分かる。
子どもたちが雑になりそうな部分や、間違えそうな漢字だけを選んでチェックをする。
また、漢字の書き方には、はねやはらいの原則がある。
これを毎回すべての漢字でチェックするのではなく、一年間をかけて少しずつ定着させていくと思えばいい。
教師が、今日は2文字で、この部分だけチェックと決めてしまえばいい。教師も子どもも、今日の学びがはっきりする。お互いにストレスも減り、そして何より定着する。
ピンポイントの指導例を紹介する。
テスト 名前がていねいに書けているかどうか。
算数の筆算 「定規で線を引いているかどうかだけチェックします。」
同上 練習問題を解かせながら
「4問目ができたら持ってらっしゃい。
先生は4問目だけ〇をつけます。残りはあとから答え合わせをします。」
視写 「一行目ができたら持ってらっしゃい。」
分かったことをたくさん書かせるとき
「一番いいなと思う意見に〇をつけて、先生に見せに来てください。
これは例えばリコーダーの指導でも、#のついたフレーズ(2小節程度)だけをテストするというような方法でも応用できる。
体育のマット運動でも、「前転のテストをします。先生は手の着き方だけ見ます。」と伝えて、目の前で次々取り組ませて合否を判断することもできる。
こうした授業の評価は、その場で見て、その場で修正し、合格をもらえることで子どもたちも達成感を感じることができる。「今日の授業はこれができるようになった。」と思える。
教師にしてみれば、評価した観点においては全員が合格しているので、それ以上の記録も、記憶も不要である。
時間短縮だけでなく、記憶や配慮という点での脳の負担も激減する。
余談だが、ノートをていねいに書かせることもずっと続けていると、惰性に流されることがある。
そんなときに
「今からノートのチェックをしようと思うのですが、すでに不合格が出そうな人?」
と聞いてみる。
おもしろがって手を挙げる子どもがいる。(中には本当に反省している子もいるが。)
「今、手を挙げた人だけ、すぐ書き直しをしなさい。
がんばって書いても合格するかどうか分からないのに、
見せる前から不合格と分かっているような状態では、レベルが想像できます。」