本業率を上げる

働き方改革

本業率を上げる

 教師の働き方改革を実行するために、まず全体のビジョンを確定する。
 ビジョンを確定しないままに進めると、細部にばかりこだわって全体を見失う。小さく時間を削って改革が成功しているようで、全体としては無駄なことをしているという危険に陥る。

 教師の仕事に就いても、「生産性」という視点は有効である。

 第一に、単位時間当たりの仕事の効率を上げる。
 一番初めに手を着けることは、「時給を上げる」ことである。教師の場合は、給料が変わらないので、時給を上げるためには勤務時間を短縮するしかない。
(年齢とともに昇給はするが、今はそれを含めていない。)

 要するに、残業時間を1分でも2分でも削ろうということである。
 自分の給料を、総労働時間で割っていくらになるかを常に頭に入れておく。

 第二に、勤務時間の割り振りを考える。
 残業を減らせば、単純に金銭的な生産性は上がっているように見える。
 しかし、これでは教育という仕事がうまくいっている稼働は測れない。

 そこで「本業率」という考え方を取り入れる。

 教師の本業は「子どもと接すること」とまず考える。
 授業をしたり、子どもの相談に乗ったりすることが本業である。

 本業率を上げるために、子どもと関わる以外に事務・雑務を限りなくゼロに近づける。 
 削減の対象になるのは会議であったり、書類提出であったり、研修であったりするだろう。
 物の片付けや、なくし物探しなどもここに入るだろう。

 いずれも完全にゼロにすることは無理だろうが、限りなくゼロを目指していく。
 例えば会議が全くない状態だと何が困るのかとか考えていくのである。

 研究については、教育公務員特例法に示されているとして、ゼロにはならないだろう。
 しかし、これもいわゆるコスパの悪い内容のものはかなりある。最近なくなった教員免許更新制度の研修も評判が大変悪かった。

 あれがもし、もう少し現場に役立っていれば、現職教師からもう少し受け入れられていたのではないだろうか。仕事を休んで自費で参加して、役にも立たない話を聞かされないと、免許が更新できず仕事が続けられないという状況が問題だったのだ。

 第三に、本業の中でも中核となる授業に焦点を当てる。
 教師の仕事の中核は授業である。

 ・・・と書いて、「いやそれだけではあるまい。」と主張する方もいるだろう。現実問題として生徒指導的な対応に追われて、まるでそちらが中心のようになっている学校や学級もあるやに聞く。

 しかし、本来は教師の仕事の中核は授業であった。今もなお授業であるべきだ。
 授業によって子どもたちが満たされ成長できるようになれば、学校が抱える問題のかなりの部分が解決する。

 にわかには信じられないという方も多いだろう。
 教育現場ではそれほどに深刻な状況になっているのだ。

 授業を本業の中でも中核だと考えていき、それ以外の部分が限りなくゼロに近づくように全体を設計していく。

 宿題はどうなるだろうか。
 個別の生徒指導事案を減らしていくためにどうしたらいいだろう。
 そして、教材研究も効率的に進められるようにするにはどうしたらいいだろう。

 授業の成果が出てくれば、宿題の量は相対的に下がってくる。

 ・・と書いても、すぐには信じてもらえないだろうことは百も承知である。

 しかし、どれだけゴールが遠くに見えようと、教師という仕事固有の問題を解決して働き方改革を成功させ新しい時代を切り開くためには、ここが一丁目一番地である。

 教師が授業に専念できる、そのための技量を身につける、そして成果を上げていくことで全体の負担を軽減していく。

 こうした主張はマスコミレベルでは絶対に見えてこない。
 彼らは、我々の本業が授業であることを見失っているし、理解をしようともしない。相変わらず学園ドラマに出てくる授業場面のない教師ばかりを追い求めているから、本質に迫れていない。
 また、マスコミには授業の良しあしは分析もできない。

 この点は研究者や評論家でも同じである。
 授業について語らない限り、どれだけ外堀を埋めようと、結局教師の仕事のありようは変わらない。
 しかし、彼らの中にも授業が見えてこない人が多い。多すぎる。

 優れた授業は実は見た目が地味になることが多い。(参照 )

 ごてごてと掲示物を出したりなどのデコレーションが多い授業が、見栄えがするから、そうした授業をする教師がいい教師だと思われる。これは現場でも同じことを考えている人が時折いる。

 授業とは子どもに力をつける、その一点のみで勝負をする。

 教師のエネルギーと時間が、そこに集中投下できるようになれば、子どもは成長し安定する。教師の負担も減り、教育現場の負担も同じく減る。

 生まれた余剰エネルギーと時間は、ICTをはじめとする新しい教育へと転化できる。

 教師の働き方改革の根幹は、「授業が本業の中でも中核」という原理を実行に移すことである。

 

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