テストで名前と文字の指導

教育技術シリーズ

 テストをさせるときに、自分の名前を書く指導を併せて行うといい。

 子どもたちが自分の名前をていねいに書けることは、これだけパソコンが普及した時代であっても大切である。
 ていねいに書けるにこしたことはない。
 今後もあらゆるところで名前を書く機会が出てくるだろうから、ていねいに書く習慣を身につけさせてられるなら、そうした方がいい。

 テストは毎回、自分の名前を書かねばならない。年間のテストも枚数もかなりある。
 指導するには都合のいい場だ。

 書写の学習として、それぞれの名前の漢字や平仮名の指導をするわけではない。
 書式に合った名前の書き方を指導する。

 新年度、1枚目のテストを実施する時から始めるといい。

大きさを決める

 テストには決まった大きさの名前を書く欄がある。
 自分の名前の文字数の分だけ、薄く〇を描かせる。教師は黒板に簡単に見本を示してもいいだろう。
 姓と名の間は、少し余計に開けておくといい。
 文字数が少ない場合は、〇と〇の間はゆったり空ける。文字数が多い場合は、それぞれの〇を均等に詰めるようにする。

 当該学年で習わない漢字をどうするかと質問する子どももいるだろう。私は、習っていなくても自分が書けるなら書いた方がいい、と伝えていた。
 子どもたちの名前が漢字表記なら、それが正式な名前である。平仮名は文字通り「仮名」である。
 本人が書けるのであれば、積極的に使わせている。それは、テストだけでなく、あらゆるところで同じである。ちなみに、名前以外でも漢字を知っているのであれば使うことには何ら問題はない。
 もちろん、本人自身もよく分からない、あるいは自信がないのであれば、無理はさせなくていい。

文字を書く

 原則は「大きく濃くはっきりと書く。」これだけである。
 その丸の中に、大きく濃くはっきりとした名前を書く。丸の中にいっぱいに入る大きさに書くだけで、上手に見える。

下線をイメージさせる

 ていねいに書くのが苦手な子どもは、文字のすわりが安定しないことが多い。
 名前の欄の少し上に、横線が一本引いてあることをイメージさせ、その上にそれぞれの文字が乗るように書かせる。文字のすわりが安定すると全体のバランスが取れる。

 国語のように縦書きの場合は、中心に一本の線をイメージさせる。実際に薄く線を引かせてみてもいいだろう。

評価する

 一回目は、実際に持ってこさせ、教師が合否を決める。不合格なら、やりなおしをさせる。
 子どもたちは、名前のやりなおしをさせられることなど今までに経験がなかったようで、本当に不合格が出たときには驚いていた。
 毎回評価する必要はない。時折、抜き打ち検査のようにやってもいい。
 また、提出時に書き直しを伝える方法もある。初回からていねいに書くことを言い続けてきているから、提出時に書き直しを命じられても子どもから不満が出ることはなかった。

お手本を書く

 概ねこれで指導は終了で、年間を通してていねいさを維持すればいいのだが、中には本当に字を書くのが苦手で、本人は努力をしているのだが、上記の指導だけではうまくいかない子もいる。
 別の手立てが必要である。

 そういう子どもたちには、教師がお手本を書く。
 名前の欄に直接、薄く書き、それをなぞらせる場合もあるし、名前の欄の下にお手本を書き「これとそっくりに書いておいで」と伝える場合もある。
 きれいな文字で自分の名前を書くと、ほとんどの場合は喜んでいる。

 自分の名前をていねいに書く、と一番初めに伝えているから子どもたちも努力はしようとするものだ。それでも苦手な子どもたちには、叱るのではなく具体的なサポートを講じる。

メッセージを伝える

 こんな話もしたことがある。
「雑な字で書く人がいます。
 それは『俺は雑な字で書くけど、先生は我慢してきちんと読めよな!』というメッセージですか。
 他人への手紙、書類あらゆるものが同じです。
 結果はどうであれ、努力をすることそのものがコミュニケーションなのです。」


 文字を書き、読み手に伝えることもコミュニケーションであり、相手へのリスペクトが必要であることを伝えておく。

あとは継続のみ

 文字の指導は、教師と子どもの根競べ。
 年間を通して指導を続ける覚悟が教師には必要である。
 これは名前だけではなく、学習全般にいえる。私は、文字をていねいに書く習慣は、最短でも3年はかかるのではないかと思っている。
 担任が一年しか受け持たないのであれば、せめて一年間を貫き通さなければならない。

 子どもが年度末末までていねいに書けば、教師の勝ち。
 途中から雑になるのであれば、教師の負けである。繰り返すが、教師の負けである。

おまけ 小さく書く子どもへの指導

 文字を小さく書く子どもがいる。特に高学年女子に多い。
 理由を考えた結果、一つの仮説が生まれた。

 小さく書くと、文字がきれいでかわいく見える。(笑)
 試しに読者諸氏も自分で書いた文字を、コピーで縮小していると分かる。
 大きな字は粗が目立つのだ。

 また、自己主張を避ける姿がこんなところにも出てくる。
 だからこそ、意図的に「濃く、大きく、はっきり」と書かせていく。
 書き言葉でも自己主張する習慣を身につけさせる。

おまけ その2 日頃のノート指導

 テストと同じである。
 濃く、大きく、はっきりと書く。

 学習ではノートを使うので、次のように話す。
「ノートのマスから、はみ出すか、はみ出さないかくらいの大きさで書きます。」
「先生が歩いて見て回っても、何と書いてあるか分かるくらいの大きさと濃さで書きます。」
算数での数字の書き方については、別途指導する。(参照「・・・」)

テストの指導ラインナップ
 市販テストの点数を上げる
 テストに対する教師のメンタルブロック
 漢字のテストの目的は何だったのか
 小学生のテストは教材そのものである
 テストはまず問題文を読ませる
 テストの解き方・最低限の知識
 テスト実施方法
 テスト採点方法
 テスト保管方法
 テストで名前と文字の指導
 国語のテストの解き方1 見つける
 国語のテストの解き方2 読む習慣
 国語のテストの解き方3 問いに対応
 国語のテストの解き方4 言語の問題
 社会のテストの解き方
 算数のテストの解き方1 ミスとの闘いに勝つ
 算数のテストの解き方2 過程を書かせる
 算数のテストの解き方3 見直しの仕方を教える
 算数のテストの解き方4 裏面は授業の反映
 理科のテストの解き方

新・教育技術シリーズ index

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