5-1 全体の進度
漢字スキルは、一週間で1つずつ進めれば終わるように設計してあります。
つまり、新出漢字からテストまでを5日で終わるペースです。
これが慣れてくれば、1クールを4日、早ければ3日で終わっていきます。
すると、二ヶ月で一学期分の内容を終われます。残りは復習に当てることができます。
5-2 復習
10問テストの結果がいくらよくなっても、子どもは忘れます。
これを当たり前だと思わないといけません。復習は家庭学習で行います。
次のように指示してできるようになるのが理想です。
「明日、○番の復習をします。自分で練習をしてきなさい。」
実際は、無理な子どもが何人もいます。そこで
自分テスト 復習のページを使って、自分でノートにテストをする。 その後自己採点をする。間違った文字だけ数回練習する。 |
という方法を教えます。
教師のチェックは、簡単です。
実際にテストをして、結果を見ればいいだけです。要は覚えていればいいのですから。
ただし、これでは勉強してこない子どももいますよね。
そこで、「自分テスト」をやった部分を見せてもらいます。
やっていなければ、テストを受けさせず、みんなのテスト中に復習をさせます。テストは、休み時間などでやらせてください。
中には、答えを見ながら自分テストをしている子どももいます。その子どもたちは、結果が出ません。結果が出るようになることば勉強の目的であることを何度も伝え、同じく休み時間にやり直しをさせてください。
これだけでも漢字練習帳と比べれば格段に簡単です。量ではなく、結果で判断をしてください。
中には特別支援的な配慮が必要な子どももいるでしょう。その子には採点でゆるめに付けたり、練習する回数を減らすなど状況に応じた対応が必要です。
このシステムだと、子どもは形式的にノートを埋めることよりも、自分自身が覚えているかどうかを考えるようになります。ごまかして困るのは自分だということも分かるようになってきます。
5-3 復習その3
高学年になると、抜き打ちで復習テストをします。あるいは2~3ページ分まとめてテストをしたりします。
漢字は、テストの点数をとるために勉強するのではなく
常時使えるようになっておくことが大切なのだと教えなければなりません。
そのための抜き打ちです。
練習も復習も時間が短く終わるので、(そしてほとんど覚えているので)家庭学習で簡単に復習ができるようになるのです。
よくある質問に先に答えます。
漢字指導は、基本的に毎日します。授業時間が基本ですが、朝の会や帰りの会、あるいは隙間時間でも使えます。
所要時間は5分から10分程度です。はじめはかかりますが、やがて慣れてきます。
漢字仮名交じり文は、いわば日本の公用語です。
公教育で教えず、宿題に依存していてはいけないのです。漢字に時間がかかって、他の授業が圧迫されるのは指導法に問題があり、宿題にシフトしてはいけないのです。
漢字の習得は「脳の記憶回路」を作ることに意味があります。大量の反復練習(つまり、漢字練習帳)は意味のない単純作業となり、むしろ記憶の定着を阻害します。
新出漢字を覚えるときに、短文づくりをさせません。それは第二段階です。
大人でも、英単語を新しく覚えるときに、いくつも例文を作れと言われても負担になるだけでしょう。一度基本的に身につけてから、応用させていくのです。そこにタイムラグは必要です。
中学年は定着率が、若干落ちます。生活と出てくる漢字の乖離が大きいからです。しかし、根気よく指導を続けていかなければなりません。
それが高学年になって実を結びます。劇的に覚える率が高くなります。
低学年は字形を整える意味で、反復練習も効果があります。それでも単純作業と子どもが思い込むほどやってはいけません。
字形の低学年 → 辛抱の中学年 → 急成長の高学年 なのです。
漢字練習が効果的に進めることができれば、家庭学習の内容が大きく変わります。これは新しい学習を進める準備になります。そして教師にとっては働き方改革になるのです。
学校通信2019より抜粋 №251
今を大切にする
教室で漢字練習をするときに
「家に帰ってから覚えようなんて思ってはいけません。今この場で覚えてしまうのです。そして、二度と忘れないようにするのです。」
というような話をしていました。
実際に、新出漢字の練習をした後すぐに、テストをしたことがあります。
テストのページに出てくるのは、新出漢字とすでに習っている漢字だけです。後は熟語になったときに読み方が難しいものだけです。
「君たちが今、真剣に新しい漢字を覚えたのなら、どのくらいの点数が取れるでしょうか。」
とやや挑発をします。
そして、1~2分程度の練習時間をとって、いきなりテストをします。
実は、たったこれだけの練習でもかなりの割合の子どもたちが、満点を取ります。また、残りの多くの子どもたちも7割8割と点数をとります。
その事実に、子どもたち自身がちょっと驚きます。
7割程度の子どもたちには「何にも練習しないでも、これだけ答えられたのです。あと3問できるようになれば、本番は満点ですよね。」と説明します。
今まで、家に帰ってから全部練習していた子どもたちも「あと3問」と言われれば、見通しが立ちます。
逆に満点を取った子どもたちには「明日も満点が取れるようにチェックをしておきましょう。」と念を押しておくのです。
これは計算練習でも、さらには跳び箱など体育の練習などにも言えます。
練習をして、すぐ評価の場を設定することが分かれば、子どもたちは練習への集中力が格段にあがります。
そして想像以上に上達します。その上達に子どもたち自身がやる気が出てきます。
これは、子どもたちの記憶のスパンによると想像しています。子どもたちは、明日のことなどはるか遠くのことで、実感がわきにくいのです。これが「今からテスト、そのための練習」と言えば、目標が明確に見えてくるのではないかと思っています。
子どもの視点で見て、努力が結果に表れることを実感できるのは大切なことです。
余談ですが、跳び箱の学習の時には「家に体育館と跳び箱がある人?」と聞きました。
あるわけないので、みんな笑います。そこで「ですよね。だから、今練習しないと上達しないのです。この時間にたくさん跳んで練習しましょう。」と話をします。
こんなところからも授業の集中力が高まるのです。