速さとていねいさ

教育技術シリーズ

速さとていねいさ

 学習を進める上で、「速さとていねいさのどちらを優先させるか」と聞かれたら、読者のみなさんはどちらを選ぶだろうか。

 もちろん、どちらも大切だし、学習の内容や状況にもよるので、絶対的な原則はない。

 私は、多くの場合はていねいさが大切であると考えている。特に小学校では、なおさらだ。

 人が物事を学ぶその内容には、ほとんどの場合、順序、ステップ、段取りと呼ばれるような一連の手順がある。
 文字を書く筆順も、調理をするレシピも、算数の筆算の答えの出し方も、跳び箱の跳び方ですら、そうである。

 多くの場合は、その手順通りに進めなければうまくいかない。また、その手順の中にも重要度の高い部分があり、確実に処理なければ成功しないというものも多い。

 人は幼い時から膨大な学習をする。学校教育だけでなく、あらゆる面での「学習」は存在する。

 それらを身につけるときに、時間をかけてでもいいから手順を確実に踏まえた方が結果的に上達が早い。
 途中を飛ばしていたり、重要な部分が不完全だったりすると、うまくいかない。

 しかし、学ぶ側の子どもは、結果を早く出したくて手順を雑に扱うことが多い。気づかずに手順を飛ばすこともあれば、面倒くさがって意図的に飛ばすこともある。
 その気持ちもよくわかる。
 だからこそ、指導者である教師は、そうした子どもの心理と実態を踏まえつつ、ていねいさを身につけることに重きをおくべきであると考えている。

 子どもの記憶に手順が確実にインプットされれば、速さは後からついてくる。同じことをやっていても自然に速くなっていく。(これは大人でも同じではないか。)

 ここから次の指導の原則が導かれる。

 大量の課題は処理のために速さを求められ、結果として雑になり、上達が遅れる。
 これに対し、少量を確実に取り組ませることが、手順を身につけ上達が速くなる。  その典型的な例が、算数における筆算の練習である

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