給料はいくらまで増えればいいのか
教師の働き方の改善があちこちで議論されている。ありがたいことだとは思う。
「教師の働き方改革」が言われ始めてすぐに、コロナウイルス感染の問題が起こり、改革は吹き飛ぶかに思えたが、その火が消えずに残っていることはありがたい。
しかし、多くの議論が、どれほどの実効性があるのかと疑問に思うレベルで止まっている。忙しいことは嘆いてくれているが「だから未来はどっちの方向?」と思ってしまう。
また、具体的に動いているものもあるが、それで現場がどれほどに変わるのだろう、まさに「焼け石に水」とはこのことである、という議論も多い。
あえて過激に話を振ってみる。
教師を希望する若者が減りつつあるという。
これは、教職に人気がなくなったのかもしれないが、若年労働人口の減少の影響もあるだろう。
我が国はずっと生まれてくる子どもの数が減ってきている。
それはとりもなおさず、20年後の労働者の数が減っていくことを表しているのだ。
(参照「人口減少と労働力不足」)
では、この対策を給料の面から考えてみる。(あえて空想してみる。)
給料がいくら増えれば、希望者は上昇に転じるだろうか。
例えば「来年度から全国の教師の給料を一月当たり1万円アップします。」と報道がなされたら、今の現職はありがたいと思うだろう。
では、これから職を探す若者の中で、教職を目指す人が増えるだろうか。
現実問題として、日本中の教師の給料が月額1万円アップするだけでも、ものすごい財源が必要になるだろう。きっと無理である。
そもそも、それ自体が無理な話の上に、仮に実行できたとしても状況の改善には程遠いと言わざるを得ない。
実は年功序列制度は、急激にその意味を失いつつある。
若い人が多くて、年齢が上がるごとに人口が減っていく昔の時代であれば、それは有効なシステムだった。
しかし、今や若者の方がむしろ少ない。それも年々少なくなっている。
企業が、優秀な人材を確保しようと思えば、初任給から上げていかないと来てもらえない。
事実、統計的には初任者の基本給は緩やかだが上がっているという情報もある。
さて、では公務員はこれからどうしていくだろうか。
これまで通り、年齢とともに給料が上がるシステムを残していくだろうか。
(最近は、事実上ほとんど上がっていないけど。)
もし、教師も優秀な人材を確保するために、初任者の給料を大幅に上げると言ったら、皆さんはどう考えになるだろうか。
当然、財源には限界があるから、上の人たちは据え置き、つまり初任者と逆転する・・・そんな状況になったら感情的に容認できるだろうか。
あくまでも仮の話であるが、可能性はゼロではない。
つまり、状況はそれほどにひっ迫しているということである。
これは業務改善のレベルが、給料や時間の問題だけでなく、職場の文化や数値化しにくいメンタルな部分にまで到達しなければならない状況にあることを示している。
マスコミやネットでもいろんな人が学校の現状について議論してくれている。
しかし、多くの教師はそれをどことなく冷めた目で見ている。
閉塞感の打破にはまだ道は遠い。