九九表を持たせる
「一桁の加減乗除」を学校全体で数年かけて取り組んでいけば、習熟率はかなり上がるのだが、それができていない学校の場合は、それぞれの学年が、それぞれの状況で奮闘しなければならない。
4年生の割り算の筆算を学習するときに、かけ算九九がまだ不安定のままという子どもがいるのは、それほど珍しい風景ではない。
割り算の筆算は、手順が複雑で面倒である。その上かけ算九九が不安定であれば、ますます面倒になるのは目に見えている。
この時、子どもたちにはかけ算九九の一覧表を渡す。
教科書に貼らせて、いつでも見ていいようにする。いつでもというのは、授業中はもちろんのこと、テスト中も見ていいことにする。
4年生で割り算の筆算を学習するときは、かけ算九九はできていることが前提である。それが「系統」ということだ。しかし実際には個人差がある。その個人差を解消し、学習全体を進めるために九九表を活用する。
繰り返すが4年で学習する割り算の学習は、そのアルゴリズム(手順)をよどみなく処理して、答えを導くことにある。九九を覚えていないせいで、割り算の手順をも覚えないままで学習が終われば、5年生の「小数の割り算」がどのような結果になるか、今からでも手に取るように分かる。
かけ算九九を持たせるのは手抜きではない。これは電化製品を使う時の取扱説明書であると考えたらいい。
トリセツは全員が見るわけではない。いつでも見ているわけでもない。必要な時しか使わない。なぜなら、使い方を知っているのにわざわざ見るのは時間の無駄だと分かっているからである。
反対に分からないところが出たら、あちこち勝手にボタンを押すか、何もできないで立ち止まるかのどちからになる。
本当の目的は電化製品を使うことで便利な生活を送ることであり、決して電化製品の使い方を記憶することではない。
割り算の筆算にも同じことが言える。