算数指導6一桁の加減乗除その6

一桁の加減乗除 その6

 「3年生の4月の段階でかけ算九九を覚えている子どもはどのくらいいるだろうか」という問いに明確に答えられる3年生の担任は少ないだろう。

 2年生でかなり練習し、それなりに合格している子どもでも時間が経過すると記憶が劣化してくることはよくある。子どもの責任でも2年生の担任の責任でもない。

 記憶とはそういうものである。2年生で、足し算、引き算と3つめのかけ算が出てくるために、子どもの頭の中で多少の混乱を引き起こすこともある。「2×1=3」などというミスは、2年生や3年生ではごく普通にあると考えていい。

 3年生担任は、いっそ割り切って考える。

 かけ算は2年生で学習し、3年生で習熟させるのである。

 2年生で覚えたと言っても、実は、「×1」から順々に唱えないと出てこない子どももいる。先にも述べたようにいつの間にか間違いを記憶し直している子どももいる。

 そうした子どもたちを含めて、かけ算が使いこなせるようになるまで根気よく練習するのが3年生担任の課題である。

 習熟とは、割り算の学習やかけ算の筆算の学習で、九九がよどみなく記憶として出てくるレベルを指す。

 スポーツでも料理でも、およそ技術というのはある段階を習得したからといって、次の段階でスムーズに使いこなせるわけではない。バスケットボールの練習でドリブルシュートの練習をしているときは成功率が高いのだが、だからと言って試合でその技術をつかいこなせるかどうかは別問題である。

 使いこなすためには、試合形式の練習か、試合そのものの中で使っていくしかない。

 これは他の技術との複合的に同時進行で処理しなければならないときに生じる課題であると推測している。

 一定の自動化レベルまで達していなければ、他の技術との併用や、瞬時の判断による技術の活用ができない。自動化レベルまで持っていければ、それが可能になるということだ。

 かけ算九九も同じである。使いこなすとは筆算をやっていてもすらすらと出てくる状態をいう、とイメージして練習を繰り返す。

 これができるのは2年生の担任ではなく、3年生の担任である。

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