算数指導14忘れ物は貸し出す

忘れ物は教師が貸し出す

 子どもたちは忘れ物をする。一年間全く忘れ物がないという経験は一度もなかった。きっとほとんどの学級でそうだろう。

 忘れ物があることを前提で対応するべきである。場合によっては、子どもには意識があって再三親に頼んでいるが、親がさまざまな事情で対応できていないことも想定できる。

 忘れ物は、教師が貸し出すことで対応する。

「忘れると自分が困るだろうから、貸し出しなどしません。困ったら次の時間までに準備すればいい。」という教師は多い。

 しかし、この考えでは失敗する。

 まず「子どもは環境に順応する」という大原則を忘れている。赤鉛筆を忘れてしまって一時的に困ったとしても、色鉛筆から似た色を持ち出したり、鉛筆の黒でそのまま丸をつけたり、あるいは何もしなかったりする。そして、それを続けていくうちに「慣れる」だけである。これでいいやと思ってしまう。

 次に、迷惑するのは隣の子どもである。「隣に借りなさい」という教師もいるが、きちんと持ってきている子どもが、他人に貸すことで一時的にでも空白の時間が生じるのはいいことではない。

忘れる子どもの方が開き直って、「これから忘れても借りればいいや」と思うのも間違った順応である。子ども同士の力関係によっては、忘れた子どもの方が長く持っているような本末転倒の場合もある。

基本的に道具の貸し借りは禁止にしておく。お互いの助け合いなど、この場合には不要である。正直者がバカを見るようなことはさせてはいけない。

 忘れたら教師のところに報告にこさせ、教師の道具を貸し出す。

 教師の道具を借りにくるので、それが自動的に報告になる。そして、教師の道具ならとりあえず粗末には扱わない。きちんと返しに来させることもできる。(私はしばしば忘れていたが。)

 何よりもきちんと道具を使うと学習がはかどる、という体験をさせ、そこに順応させることが目的である。赤鉛筆でていねいに色をぬり、丸をつけていくと美しいノートになることが気持ちいいと感じるようになれば、持ってくる必要感が生まれてくるのである。

 その感覚を身につけないうちに個人の責任云々と言っていても効果はない。

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