段の高さより跳躍の高さ

体育授業のコツ

 子どもたちも跳び箱に慣れてくると高い段を跳びたがるようになる。中には教師がそれを勧める場合もあるようだ。
 もちろん高い段を跳ぶことは悪いことではない。
 しかし、跳び方をよく見てみると、着地の時におしりが跳び箱を今にもかすりな跳び方をしている。手の着き方も乱れていて、美しい跳び方とは言えない。むしろ危険ですらある。 

 高い段を使って無理した跳び方をするより、むしろ低い段で跳ぶことを勧める。
 一つの目安として「学年=最高段数」、つまり6年生なら6段が跳べれば十分と考えていい。低学年ならば、低学年用跳び箱を使う。ない場合はぜひとも学校予算で揃えることをおすすめする。
 単純に段の高さを評定の基準にしてしまえば、身長が高い子どもの方が有利となる。そもそも、跳び箱運動は高跳びや幅跳びと違い、高さが記録になるような運動種目ではない。

 跳び箱運動は、より遠くから、より(腰の位置を)高く、より遠くに、より静かにふわっと跳ぶことを目指させる。そのために段は、自分にとって気持ちよく跳べる高さを選べばいい。

 そうすることで跳び方が美しくなっていく。
 遠くから踏み切り、遠くに着地しようとすると、着手にこだわらないといけなくなる。
 腰の位置を高くすることも同じである。
 また、着地の時にふわっとしようとすると膝の使い方にこだわるようになる。

 きれいなフォームを、と言わなくても、自然ときれいなフォームを目指さざるを得なくなる。
 きれいなフォームとは、無駄のなり洗練された動きのことを言うのであり、決して他人に見せることを意識したフォームのことではない。

 私は子どもに、跳んだときのふわっとした感覚を気持ちよく感じるような跳び方をしよう、と話して感覚をつかませることがよくある。

 念のために申し添えておくと、跳ぶ気持ちよさを感じるようになった子どもたちは、やがて次の高さに自然に挑戦しようとする。もっと心地よさを感じるためである。
 そのときには、教師もすすめればいいのである。また、一度跳んでみて怖いと思うようであれば、また元の高さに戻せばいいのである。

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