音読指導は、集団から始めて、列ごとなど人数を減らしていき、最終的には個人で読めるようにすることが目的となる。
集団で練習するのは、あくまでも通過点に過ぎない。教師がここを理解しておかないと、指導が中途半端になる。
ずっと集団で練習していくうちに、子どもたちにも自信がついてくる。
テンポよく全体で練習しているときに、突然
「では独りで読める人?」
と振ってみる。反射的に数名の手が挙がるはずである。
一人を指名し、読ませる。上手に読めればもちろんほめる。しかし、突然の個人だから緊張で読めないことがある。そのときは急に独りで読んだことを、それも第1号だったことをしっかりとほめる。
人間の歴史の中では、どんなことでも一番初めは貴重な存在である。一人が突破すれば、あとから見る人は、そのまねをするだけである。
スポーツしかり、科学技術しかり、芸術しかり、である。
学級の中でも初めて音読を独りで挑戦したという賞賛は、その子だけに与えられる。一番の緊張感は子どもたちこそが知っているからだ。
読み終わったときにすかさずほめる。そして「読みたい人?」と間を置かず促す。
また数名の手が挙がる。指名して読ませる。短くほめる。
そして、また指名する。
時折、全体に返す。
「はい、今の〇〇君のように素敵な声と姿勢で、全員読みます。さんはい。」
子どもたちの声はまたよくなる。
そしてまた個人に振る。 時折、全体に返す。この繰り返し。
やがて挙手が出なくなる。その時に話をする。
「独りで読むのは、みんなで読むよりも10倍緊張するけど、10倍成長します。すでに独りで読み終わった人は、今気持ちがすっきりして、また挑戦したいと思っているでしょう。それは心が成長したからです。」
音読指導は「音読を指導する」だけでなく、こうして個を自立させていくという目標を同時に目指していくように進めていく。
むしろ、音読が上手になることよりも自立の方が大切かもしれない。
どんな学習指導にも、こうした裏に隠れた「真の目標」を意識して組み立てていくと、年間を通して子どもたちが成長していくことができる。
音読指導ラインナップ
00 教室で行う音読指導
01 声を出させる音読指導
02 全体から個別への音読指導
03 個から自立への音読指導
04 集団に埋もれさせない音読指導
05 1文から始める音読指導
06 あらゆる教科でできる音読指導
07 微細にこだわる音読指導
08 黙読へ向かう音読指導
09 詰めにこだわる音読指導
10 進化した音読
11 暗唱と連動した音読指導
12 他教科へ波及する音読
13 裏技の音読指導
おまけ 音読の宿題は保護者に恨まれる
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