こうして指導をしていくと音読の効果はさまざまに波及していく。
年度の後半くらいは以下のような様子になっていく。
1 始業からトップスピード
担任していた学校はノーチャイムだった。時計に合わせて子どもたちが行動する。しかも、学級ではあいさつもしてなかった。
5分休みを取り、定刻になったら指示を出す。算数の授業である。
「教科書〇ページを開いて、問題文を一回読んだら座ります。」
授業を始めます、とか、算数の準備をしなさい、とか何も言わない。
子どもたちはすでに慣れているので、それでも大半の子どもが読み始める。読み終わると、着席して待っている。わずかに遅れた子どもたちもここで調整をして追いつく。
頃合いを見計らって、と指示を出す。
「全員でもう一度読みましょう。さんはい。」
この段階で、全員がほぼそろう。一回目の音読は授業モードに入るための布石である。
子どもたちは読み終わった段階で、すでに問題を解こうという状態に入っているので、いきなりトップモードである。
2 効率的な音読
音読に慣れてくると、読みながら内容そのものに意識が向くようになる。
国語の物語文では、
「読み終わった後に登場人物を聞きますので、考えながら読みなさい。」
と指示を出してから、音読させる。
読み終わった子どもから、ノートに書き始める。読みに目的があると、発問を出してから初めて考えるというようなムダがなくなる。
いつもの読書であれば、初めて読んだ段階で様々な内容を理解しなくてはいけない。同じ本を何度も読むわけではないのだから。
そうした読書へと移行できるよう日常的に取り組んでおく。
一度読んだだけで、あらすじをノートに書かせることもできる。
これをさせてみると、子どもたちの読み取りの内容に大きな幅があることにも気づく。
導入から結論までを一貫して読める子どもと、冒頭あるいは終末だけが記憶に残っているような子どもや、明らかに違った内容が頭に入っている子どももいる。
こうやって、ただ文字を声に出すだけの活動に終わらず「読む=理解する」という習慣づけを日ごろからしておくだけで、実は子どもたちの学習能力は高くなっていくのである。
音読指導ラインナップ
00 教室で行う音読指導
01 声を出させる音読指導
02 全体から個別への音読指導
03 個から自立への音読指導
04 集団に埋もれさせない音読指導
05 1文から始める音読指導
06 あらゆる教科でできる音読指導
07 微細にこだわる音読指導
08 黙読へ向かう音読指導
09 詰めにこだわる音読指導
10 進化した音読
11 暗唱と連動した音読指導
12 他教科へ波及する音読
13 裏技の音読指導
おまけ 音読の宿題は保護者に恨まれる
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