強いつながりと弱いつながり

学級経営

第2章2節 ネットワーク理論の基礎1「ノード(点)」「リンク(線)」 の続き
ネットワーク理論の基礎2 「強いつながり」と「弱いつながり」

 ネットワーク理論の中に「強いつながり・弱いつながり」という考えがある。

 一般的に人間が形成するネットワークには、強弱がある。
 物理的な距離が近いと、自然とつながりは強くなる。
 近所に住む人と、遠方に住む人では、近所の方がつながりは強い。
 趣味の会う人もそうだろうし、家族などは最も強いつながりだろう。
 誰もが同じような強さのつながりをもつことはない。それがごく自然なことである。

 学級でも同じである。
 「みんなと等しく仲良くなる」というようなことは、現実的にあり得ない。

 子どもたちの意識からすれば、座席が遠いだけで心理的な距離はかなりある。住んでいる場所も離れていて、前年度までも同じ学級になったこともなく、しかも今も座席が遠いなら「仲良くなる」どころか、よく知らない状態である。

 一般的な社会の構造と同じで、学級でも「いくつかの強いつながりと、それらを結びつける弱いつながり」ができ、全体として大きなネットワークになっている。

 さて、話はここからである。情報が伝達するという点において、強いつながりと弱いつながりでは、どちらが速いだろうか。

 これは強いつながりの方が速いだろうと考える。しかし、実際は弱いつながりを介して情報はネットワークの中をめぐっていく。
 強いつながりの中では、共通した情報は広がりやすいだろうが、同質性が強いので、同じような情報が飛び交うことが多くなる。サッカーが好きな人のネットワークではサッカーの話は広まりやすいが、それ以外は話題になりにくいと想像してもらえばいい。

 新しい情報は、弱いつながりから入りやすい。
 そこで得られた情報が、強いつながりの中をめぐっていく。うわさ話の構造はこれに近い。またネットでの情報拡散もこれに近い。

 学級の中においても、教師が「強いつながり」「弱いつながり」の存在を自覚しておけば、それを十分に生かした活動を仕組むことができる。
 授業の中で多様な考えを出させようという時には、あえて仲良しでない子どもどうしを組ませた方が意見が出やすいということもある。子どもたちも、そうしたメリットを自覚できる。

 こうして、子どもたちも多様なネットワークの中で、生活ができるようになる。
 そして、弱いつながりを単に強めていこうとするだけでなく、つながり方を学級の中で生かせるようになる。

第2章4節 現代社会のネットワークは多様な層で成立している へ続く
本編 「21世紀型学級経営 学級ネットワーク論」

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