入部の動機

現代教育論

 私は体育が、いや運動が嫌いだった。今でも嫌いである。できることなら、外にも出ずに家でのんびりしたい典型的なインドア派である。

 小学校の頃から運動は苦手だった。自転車に乗れるようになるのも友だちより遅かった。水泳で泳げるようになるのも人より遅かった。足も遅く、かけっこは嫌いだった。逆上がりができたのはなんと高校になってから。

 そんな自分でも中学、高校はバスケット部に所属していた。どちらも3年生になっても補欠のままだったが、ともかく6年間は所属していた。

 小学校6年生の時にバスケットボールの学習があった。
 前後のことは覚えていない。
 自分は試合に出ていた。いよいよ、タイムオーバーという時に、私にボールが回ってきた。

 みんなが声をかける。
「シュートー!」
 私はゴールめがけてシュートを打った。

 ボールはネットを通過し、見事に成功した。友だちからの歓声が起こった。

 そのあと、そのシュートが時間内か時間外かみんなもめていたが、私にはどうでもよかった。(結果を覚えていない。)

 自分がシュートを決めたという強烈なインパクトだけが残った。

 友だちから褒められたかどうかも覚えていない。先生はおそらく隣のコートを見ていたのだろうと思う。声をかけられた記憶も、その試合を見ていた記憶もない。

 そのたった一回のシュート成功体験が、中学校での入部のきっかけになる。運動嫌いの自分が唯一好きになったスポーツがバスケットだったのだ。

 あの一本のシュートが決まっていなければ、私は違う部活を選んでいたかもしれない。補欠でありながら6年間も続けていなかったかもしれない。

 今でもバスケットは好きなスポーツだ。時折ゲームを見るが、血が騒ぐ感覚は今でもある。

 体育の授業の1回のシュートで、人生が変わるかもしれないという、自分自身の原体験はいつも授業をしていくうえでの戒めになっていた。

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