体育指導38走り高跳び1

走り高跳び1

 走り高跳びの跳び方は、日常生活にはあまり出てこない跳び方である。その特別な跳び方ができるようになることが技能面での習得になる。

 中学や高校になれば背面跳びのような跳び方になっていくのだろうが、小学校では「はさび跳び」だけができればいい。

 助走してバーに近づき、跳ぶ直前には、バーに対して体は平行に向いている。バーに近い方の足を振り上げ、追いかけるようにしてもう一方の足も振り上げる。

 跳び越えるときに後の足が遅れて出るために、バーをはさんでいるように見えるところからこの名前が来たのだろう。

 さて、授業の組み立てとして、あえてはさみ跳びを教えずに試行錯誤させ、子どもたちに見つけさせるという方法もある。

 しかし、はっきり言うが時間の無駄である。試行錯誤という方法が学習に適しているのは、子どもたちの中に選択肢がたくさんあるときだけである。走り高跳びの学習で子どもたちに試行錯誤をさせても、正面からただひたすらに跳ぶだけの子どもがほとんどである。

 小学校という時期は経験の量が圧倒的に不足している。だから選択するとか工夫すると言ってもそのためのストックがないのだ。

 もっとストレートに新しいことを教え、身につけさせ、おもしろさを実感させて言う方が授業は楽しくなる。子どもも学びをおもしろいと思うようになる。

 さて、なぜ正面から跳んではいけないのか、運動の構造を考える。

 正面から跳ぶということは、体はバーに対して垂直の向きである。この状態から足を振り上げてバーを乗り越えるためには、足の動きを保証するための「空間」が必要となる。

 つまり、体とバーの間に足が入るスペースがないと足が引っかかるのである。

 しかし、そのスペースを確保するためには、バーから離れた位置で跳ばなければならない。結果として、高さを生み出すために距離まで作らなければならないことになる。

 これに対して、バーに平行に走っていけば、足を振り上げても体とバーの間にスペースは不要である。距離を創り出す必要はない。だから、高さだけを生み出せるような跳躍に特化できるわけである。

 それが記録を伸ばすために最も合理的なのである。これを子どもに試行錯誤させても考え着くまでに単元が終わる。

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