運動会
運動会と言えば、日曜日に学校にやってきて、暑い中にみんなで参加し応援して、昼休みには親の作った弁当を食べ、最後は紅白(またはブロック)の勝敗を決めて、日焼けして帰る、というのが日本の(大げさでなく日本中の)伝統だった。
良くも悪くも、恒例行事だった。一大イベントだった。
これが崩壊しつつある。
原因の一つが熱中症である。春の運動会も秋の運動会も暑い。いや熱い。練習中に倒れる子どもも続出する。当日も長時間の運動場は危険である。
学校によっては、教室の椅子を運動場に持ち込み、地域から借りられるだけのテントを借りて子どもたちの応援席に設置し、水筒を持参させ、その上で給水タイムや運動場の水まきまでやる。それでも熱い。
ついに午前中で打ち切る学校が出てきた。
これによって実は喜んでいる人がいた。保護者である。
母親は弁当を作らなくて済む。父親は場所取りに早朝から出かけなくて済む。子どものためと思って我慢してやっていた保護者からは、「不謹慎かもしれませんが、よかったです。」という声を何人も聞いた。ちっとも不謹慎とは思わないが。
私も我が子の運動会で場所取りに行った。妻も教師なのだが、これがなぜか妻はいつも子どもたちと運動会の日程が被る。弁当は祖母二人がもってきてくれた。私は朝場所取りに出かけた後に、時間になったら今度は妻のためにビデオを撮らないといけない。
上の娘だけが小学生の時は、下の弟たちはずっと連れて移動する。ビデオを撮っている最中だけ「じっとしておきなさいよ」と声をかけつつビデオカメラを回していた。今度は、弟たちも入学してくると、何度も何度も撮影の順番が回ってくる。そのたびにあっちに移動、こっちに移動。
ちなみに私自身はこの録画したビデオを自分だけで見直したことは一度もない。祖父母と妻が見ているのを横目で見ているだけである。
似たような境遇で運動会を過ごす保護者も多いだろう。母親の作る弁当の苦労話も数々聞いた。
熱中症で心配なのは子どもだけではない。見に来てくれている祖父母の方もとても心配である。もしこれが午前中で終わるのなら、少なくとも食事は家でみんなで取ることができる。家族によっては外食するかもしれない。それでいいのではないかと思うくらいの暑さである。