器械運動は、鉄棒運動、マット運動、跳び箱運動の3つがある。
いずれにも共通していることは、自分の腕で体重を支えることである。
鉄棒はそのほとんどが、腕支持の運動である。
跳び箱は着手によって技の成否が大きく変わる。
(着手しない場合、それは跳び箱運動とは呼ばない。だから全て腕支持であると言える。)
マット運動も動作が大きくなるにつれて腕の力を利用する割合が高くなる。倒立系、スプリング系などがそうである。
小学校で行う器械運動には、実は筋力を大きく必要とする種目はそれほどない。しかし、自分の体重を支えるだけの力は身につけておかせたい。
このために例えば低学年のうちに、動物歩きのような運動を積極的に取り入れておく。四つ足で歩く、ウサギのように手と足で跳躍する、足を伸ばした状態で腕だけで進むなどさまざまなバリエーションがある。
これらは全て、その後の器械運動の布石だと考えていい。
このほかにも、跳び箱にまたぎ乗って、腕だけで前に進む動き(できる限り足を使わない。)
鉄棒での「つばめ」という動きも同じである。この「つばめ」は、手首を起こせるかどうかという小さな部分に着目する。鉄棒には「ダンゴムシけんすい」もおすすめである。
マットでのカエル倒立や手を着いて足うちなどの動きも全て、その後に役に立つ。
これらの動きは、腕で自重を支えるための筋力、というよりは、その感覚を身につけることが大切なのだろうと思っている。自重を支えられないほどの体重と筋力のアンバランスな子どもは、低学年ではそれほどいない。(ゼロではないが。)
しかし、経験が足りていない子どもは多数いる。動物歩きも、よく見ると巧みに動ける子どもとそうでない子どもたちの差ははっきりとしている。学校の体育の中で経験量を増やしていくようにしたい。
次の運動に発展させるための、前の段階の動きを「アナロゴン」と呼ぶが、1年生の体育の内容はまさに、この「アナロゴン」の連続である。
低学年の教師がこれを理解して、多様な運動を経験させておくだけで、子どもたちは上の学年に上がるときの身体感覚を身につけていくことになる。
器械運動を行わなくても、生活の上でも腕で自重を支えるだけの力は必要であろう。