ベビーブーム 教職現場特有の人口ピラミッド
時期は多少のずれがあるとはいえ、全国の都道府県・市町村では教師の大量退職・大量採用が進んでいることと思う。
教師の仕事は、子どもの人数に合わせて定員数が確定する。
だから、年代や地域に応じて、教師の定員数も変化し、各年の募集人数も変化する。
我が国の人口は戦後すぐに出生数が増えた。戦争の混乱がなくなり、出産ができる環境が整ってきた結果である。その時期は「ベビーブーム」と呼ばれている。
やがて、その時の子どもたちが大きくなり、結婚出産の適齢期になり、再び出生数が増えてきた。この時期を「第二次ベビーブーム」と呼ばれている。
この時の子どもたちを受け入れるために、全国の学校で教師が不足し始めた。
都市部では、住宅地が次々と建ち、学校も増えた。教師は続々と採用される。
だから、この世代の教師は他の世代に比べて、相対的に人数が多い。
今の60代くらいの世代である。
日本の人口増は、その後緩やかになり「第三次ベビーブーム」は起こらなかった。
大量に採用されたその世代の教師は、そのまま年齢を重ねていく。子どもの数が劇的に増えるわけではないので、(地方にばらつきはあるとはいえ)大量採用時代の教師が多くいるために、その後の教師の採用は相対的に少なくなる。
地元福岡市では、巨大な政令都市でありながら、小学校教師の募集枠が一桁という時期もあった。
この時期は、教育現場に若手がおらず、今いる教師が単純に年を重ねていくだけだった。
一時期は教職平均年齢が40代半ばまで上がっていた。30代でも、学校で一番下、というようなところはたくさんあった。
やがて、大量採用時代の先輩教師が退職を迎えていく。毎年毎年、ものすごい数の退職者が出る。
(再任用があるじゃないか、という意見もだろうが、5年後にはいずれにしても退職である。)
子どもの数は全国では減りつつあるとはいえ、都市部では増えているところもある。
当然、教師の数が足りなくなる。
そこで、再び大量採用時代の始まり、これが今の学校現場である。
本論はここからである。
若手を大量に採用することは、それはそれでとてもいいことだと、個人的には思う。
年齢層に幅が出て、職場は活気が出てきたように思えた。
大量採用時代の次に来るのは、結婚ラッシュである。
念のために付け加える。結婚することがいいとか、悪いとか、そのような議論ではない。それは本人の意志の問題であり、他人がどうこう言うことではない。
一時期、同じ学校の中から次々と結婚の報告が聞かれた。結婚の多い職場の管理職は、何度も披露宴に呼ばれていた。
そして次に来るのが、ベビーブームである。
今、学校現場には産前産後休暇や育児休業を取っている教師が多い。
しつこいようだが、それはそれでとてもいいことなのである。論じているのは制度の問題である。
休暇、休業を取れば、当然代替講師が必要になる。
先日から、男性職員にも育児休暇取得100%の通知が教育委員会から来た。
学校現場全体からすれば、(期間はともかく)単純計算で2倍の職員が休業・休暇をとることになるだろう。母親が取っていただけのものが、父親も取るのだから。あくまでも単純計算だが。
どこの学校にも子育てで休んでいる職員はいる。
つまり、代替講師は、すでにかなり現場に出ているということだ。
新任の応募数が減っているというが、代替講師も慢性的に不足しているのである。
大量採用を始めたころから、こうなることはある程度予測はできていたはずである。
教育委員会も新任採用の年齢制限を大きく引き上げて、現場に幅広い年齢層がくるようにと取り組んでいたが、大きな効果はなかったようである。
子どもの数に合わせて定員数が決まるという、教職特有の制度によって、他の仕事にはない職員の人口ピラミッドができている。
教職のベビーブームはあとしばらく続くだろう。だから、慢性的な講師不足もしばらく続くだろうと推定する。
さて、10年後どうなっているだろうか。
やがて大量採用時代は、終わりを迎え、再び教師の採用は頭打ちの時代が来る。
今の20代がずっと職場の一番下のまま、年を重ねることになる。
そしておそらく次の大量採用時代はもう来ない。日本中で子どもが減っているからだ。