「黄金の三日間」再分析

 「黄金の三日間」この言葉も現場にかなり定着してきた実感がある。ただし、解釈はさまざまだ。いろいろな考えを聞く。共通して言えることは、「出会いを大切にしましょう。」というくらいだろうか。

 私が20代のころは、「ぼちぼちやっていこう」という空気が主流だったので、それから比べると、大きな変化だとはいえる。そして、いい傾向だともいえる。

 確かに子どもたちは初めはおとなしい。静かだし、指示もよく通る。

 しかし、実はこれは子どもたちだけではない。我々大人も同じである。4月1日に異動があり、新しい学年が決まり、緊張の中で新年度が始まる。なんだかんだと言っても、気を遣うし、家に帰るとぐったりする。

 これは人間関係の初期化が行われているからである。

 新しい人間関係の中で、それぞれが自分の立ち位置やほかの人同士の人間関係を創っていくうえで、懸命に情報収集をしているのである。

 今までの関係が使えない以上、ゼロから作り直しである。つまりフォーマットを作成しているのである。

 今まで使わなくてよかった感覚を最大に研ぎ澄ませなければならない。だから疲れるのだ。大人も子どもも疲れる。

 ゼロから創るのだから、初めにできあがる(ように見える)関係が極めて重要である。一度できたものを壊すのは難しい。よほど意図的に壊しにかからないと、一度できた関係を壊すのは至難の業である。

 黄金の三日間とは、このフォーマットの初期化の過程である。

 だれがこの集団のボスか(もちろん教師を含めて)を決める場であり、どのようなルールが発現していくのかを決める場でもある。

 子どもたちが、先生の言うことにきちんとついていけば、自分も成長できそうだし、楽しく過ごせそう、と思えればまずは成功だといえるだろう。

 だからすべてのルールをこの三日間で決めなくてもいい。決めようと思うと大変なことになる。人間関係を更地の上に新しく作る手順が示されること、そう考える段取りも見えてくる。

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