教室での音読は、少ない分量で指導する。
代わりに、微細な部分にはていねいに指導し、正確に読ませていく。
日本語は、助詞の存在が文の意味を決める上で重要な位置にある。だからこそ、助詞は正確に読ませる。
後述するが、日本語の文章で意味を確定するために助詞の役割は非常に大きい。助詞を読み間違うと文全体を違った意味にとらえる危険も出てくる。音読の指導を通して、ここは妥協できないところなのだと実感させていく必要がある。
文末も正確に読ませる。文末があいまいな読み方をする子どもは意外に多い。
これは日常の話し言葉でも見られる現象だが、最後まで言い終わらないような話し方に慣れている子ども一定数いる。
文末に肯定、否定、疑問の型が出てくる日本語の場合は、最後まで読み切ることは大切なトレーニングになる。これも音読練習によって実感させていく必要がある。
また、熟語の読み方も、確実に読ませていく。これは漢字の指導とも連動することであるが、読めない漢字は決して書けるようにはならない。そもそも読み間違えているのだから、漢字のテストにある「次の熟語を書きなさい。」という問題で読み仮名が出てきても、書けるわけがない。
正しく読めなければ、個々の漢字の読み方が不安定になり、語彙が定着しない。
しかし、熟語を読み飛ばしている子どもたちは、教師の想像以上にいる。一人一人音読させたところで初めて気づくことも多い。社会の教科書だとなおさらである。
熟語に関しては、教科書に読み仮名を書かせてもいい。まずはすらすらと読めるようになることが先決である。文脈の中で読んでいくうちに、その言葉の語感が頭の中に入ってくる。
さらには、発音にも気を配りたい。「おはようございます。」を「おあようごあいます。」と発音している子どもは多い。
発音で最も配慮が必要なのは、かけ算九九である。「四」「七」「八」などが明瞭に発音できていないために、混乱している子どもはかなりいる。「四七 二十八」を正確に「ししち」と発音せず「ひひち」「しちひ」「ひちひ」などばらばらである。
かけ算九九は、まさに正確な音読が重要不可欠の学習である。
社会の用語なども同じく、読み方が不正確がゆえに意味がとらえにくくなっている例はいくつかある。新しい言葉が出てくるたびに、板書を写させて終わるだけでなく、一度は声に出させて読ませる。
理科の「生命の誕生」単元に『へその緒』が出てくる。
これを教えるときに、教師が意識していないと「へそのー」と発音している。その結果、子どもたちがテストの中で「へそのう」と書くという事例が、かなりある。
どちらも発音としては同じになるからだ。
教師が「へそのお」とあえて強調して発音し、意味を説明し、ノートにも書かせたうえで、間違いやすいことも付け加えるくらいのことをしないと、徹底しない。
「こうし」の発音も「子牛」と「講師」では違う。
音読の指導は聞き方の指導にも連動する。
音読指導ラインナップ
00 教室で行う音読指導
01 声を出させる音読指導
02 全体から個別への音読指導
03 個から自立への音読指導
04 集団に埋もれさせない音読指導
05 1文から始める音読指導
06 あらゆる教科でできる音読指導
07 微細にこだわる音読指導
08 黙読へ向かう音読指導
09 詰めにこだわる音読指導
10 進化した音読
11 暗唱と連動した音読指導
12 他教科へ波及する音読
13 裏技の音読指導
おまけ 音読の宿題は保護者に恨まれる
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